森永製菓<2201>はココアの機能性について研究を重ねている。これまでにココアの冷え性抑制効果や抗インフルエンザウイルス効果についても研究結果を公開してきたが、5月13日から開催された「日本栄養・食糧学会大会」では、牛乳を飲んだ後に起きる腸内の水素発生に関して興味深い実験結果を発表した。
牛乳が引き起こす水素の発生については、大きな個人差がみとめられる。それは、牛乳に含まれる乳糖を分解できる酵素ラクターゼの分泌量が人によって違うからである。ラクターゼが少ない人が牛乳を摂取すると、乳糖を小腸で分解しきることができず、乳糖が大腸に入ってしまう。ここで乳糖は悪玉菌などによって分解されるのだが、その際に発生する水素ガスの量が多いとお腹の不調が引き起こされやすい。
ただし水素が人の体内で一方的に悪い作用だけを及ぼすとは限らない。水素は酸化ストレスから臓器を守る抗酸化効果が認められており、将来的に臨床医療で有効利用できることも期待されている。
森永製菓が埼玉大学との協力のもとで行った実験は被験者に水、水とココア、牛乳、牛乳とココアを摂取させて、その後の呼気中の水素濃度を想定するというものだ。その結果から、ココアは、もともと牛乳を飲んだあとの水素発生量が少ない人に対しては水素発生を促す効果を、もともと水素発量が多い体質の人には水素の発生を抑制する効果をもつことが解った。つまり、ココアは乳糖耐性が高い人と低い人の水素発生に対しては逆の働きかけをして、水素発生量を最適化するかの様にコントロールしてくれるのだ。
乳糖を分解しにくい体質の人は、牛乳とココアを一緒に摂取することで、腸の中で発生する水素ガスを減少させて、満腹感や下痢、またはお腹がゴロゴロ鳴るといった不快感を緩和することができるかもしれない。一方で乳糖耐性がある人は、牛乳にココアを加えることでいつもは発生量が少ない水素の産出を促し、水素の抗酸化作用のメリットを得られる可能性がある。
ココアと牛乳の組み合わせは、味が美味しいだけではなく、機能的にも相性が良いらしい。ココアの不思議な特性の解明については、今後も森永製菓の研究に期待をしたい。(編集担当:久保田雄城)