悪玉腸内細菌から大腸を守るのはLypd8――大阪大学

2016年04月03日 08:41

 大阪大学などの研究グループは、大腸の腸管上皮細胞に発現するLypd8というたんぱく質が有鞭毛細菌の侵入を抑制して腸管炎症を抑えるメカニズムを突き止めた。根治的治療方法がない潰瘍性大腸炎の新たな治療法の開発につながることが期待されている。

 大腸には約1000種類、600兆個以上の腸内細菌がおり、腸内細菌叢(腸内フローラ)と呼ばれている。ビフィズス菌や乳酸菌など健康増進面から注目されることが多いが、一方でヒトの体に害を与える菌もいる。

 近年、増加傾向にある潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患にも腸内細菌が大きく関与しているとみられている。これらの疾患は、ヒトの大腸表面にあって腸内細菌が容易に大腸組織に侵入してくることを防いでいる腸管粘膜バリアが壊れてしまうことが原因の一つと考えられているが、これまではこのバリアがどのように細菌の侵入を抑えているかというところからよくわかっていなかった。

 研究グループでは、大腸上皮細胞に特異的に高く発現しているLypd8というタンパク質に目を付け、実験としてこれが欠損したマウスを作製した。通常のマウスでは腸管の内粘液層はほぼ無菌状態に保たれているが、Lypd8欠損マウスでは、内粘液層に腸内細菌が多数侵入し、通常マウスと比較して重篤な腸炎を発症することを見出した。

 また、Lypd8は高度に糖鎖で修飾されるGPIアンカー型たんぱく質で、大腸管腔に分泌されて特に鞭毛を持つ腸内細菌に結合することで運動性を抑え、細菌の侵入を防止していることも明らかにした。

 研究グループでは、「潰瘍性大腸炎は発病原因のさらなる解明と新規治療開発が急務とされており、今後、Lypd8たんぱく質の補充療法などの粘膜バリア増強による潰瘍性大腸炎への新たな治療法の開発が期待される」とコメントしている。(編集担当:城西泰)