早稲田大学と東京大学を中心とする共同研究グループは、日本人を含めた12カ国におけるヒトの腸内細菌叢データの比較解析を行い、菌種組成が国ごとで大きく異なることや日本人の腸内細菌叢の特徴を明らかにした。
研究グループは、日本人106人の腸内細菌叢の大規模なメタゲノム解析を行った。その結果、腸内細菌叢に約500万の遺伝子を発見し、さらに、欧・米・中国等の11カ国のデータとの比較解析から、日本人腸内細菌叢は、①ビフィズス菌やブラウチア等が優勢し古細菌が少ない、②炭水化物やアミノ酸代謝の機能が豊富である一方、細胞運動性や複製・修復機能が少ない――という特徴が分かり、さらに海苔やワカメ(の多糖類)を分解する酵素遺伝子が、日本人の約90%に保有されるのに対して、他国では15%以下で、この酵素が日本人集団に特徴的に広く分布していることも明らかとなった。
研究グループは「日本人の腸内細菌叢の特徴に生体に有益な機能が外国人よりも多く含まれており、その総合的な有益性は日本人の世界一の平均寿命や低い肥満率等と関連することが示唆された」と結論付け、「今回の成果は、ヒト腸内細菌叢の集団レベルでの多様性と日本人の腸内細菌叢の特徴を世界で初めて明らかにしたもので、今後、腸内細菌叢が関与する病気の治療や予防、健康増進に役立つ生活習慣の改善等への応用が期待される」とコメントしている。
腸内細菌叢については、腸内フローラ(花畑)などともいわれ、今、健康食業界でもキーワードとなっている。乳酸菌を入れた味噌汁やココアも出回っているほどだ。腸内細菌叢の乱れは便通異常など消化器官の不調だけにとどまらず、全身疾患や脳神経系などへの影響も指摘されている。腸内には1,000種類以上、500兆個以上の細菌がいるとされる。その広くて深い世界のナゾが明らかになっていくことが期待される。(編集担当:城西泰)