ネット全面解禁で、日本の選挙はどう変わる?

2013年02月03日 09:12

 2013年1月30日。自民党は、インターネットを使った選挙運動を全面的に解禁する公選法改正案の骨子案をまとめた。この案には、候補者・政党のホームページやブログ、電子メールをはじめ、フェイスブックやツイッターなどのSNSサイトの利用も含まれている。

 自民党では、3月にも改正案を成立させ、早ければ夏の参院選で解禁される段取りを描いており、各党に提案して協力を呼び掛けているが、対象を限定するか全面解禁するかが焦点となりそうだ。

 自民党の案が通れば、これまでは選挙期間中はできなかった「候補者・政党のホームページやブログの更新」や「ネットを使った投票への呼び掛け」、「有料のバナー広告」(政党限定)、また、電子メールやSNSサイトを通した選挙活動が可能になる。

 ネットでの選挙活動か解禁になれば、様々なメリットが考えられるが、もっとも大きなものとしては、無名の候補者や初めて立候補する人でも、多くの人に意見を知ってもらえる機会が与えられることが挙げられる。また、有権者としても、候補者の意見を比較したり、分析したりしやすくなるうえに、候補者の意見を文章や動画等で保存できる。それが証拠にもなるので、候補者は選挙のときだけの口からでまかせのようなことを言えなくなる。より、責任のある発言が求められるようになるだろう。また、SNSなどの利用は無料なので、そういったツールを利用することで、資金力の影響が今までより小さくなる可能性があると考えられている。

 一方、メリットがあれば当然、デメリットも考えられる。まず、大きな問題がセキュリティ面での不安だ。ただでさえ、ネットサービスの個人アカウントを狙った不正行為が横行している。SNSサイトまで選挙利用するとなると、架空アカウントを使って候補者に不利益な情報を流す「なりすまし」や、利用者名とパスワードを盗み出す「乗っ取り」なども懸念される。複数のネットサービスを連動させることによって、そのリスクはさらに高まってしまう。ひとつのサイトを破られてしまうと、連鎖的に被害を受けて悪用される恐れが出てくるからである。また、匿名での誹謗中傷も増加するとみられている。陰湿な選挙戦が繰り広げられる可能性が高くなり、それを取り締まることができなければ、情報の信憑性も失われていくことになりかねない。

 あと無料のサービスを利用することで、選挙費用の削減につながる一方、その気になれば、これまで以上に膨大な費用をかけることもできる。たとえば、アメリカの大統領候補だったロムニー氏がネットでの選挙活動費に約21億円もかけていたことはあまりにも有名で、日本ではそこまではいかないまでも、資金力で大きな格差が生まれる可能性は否めない。

 いずれにせよ、やってみなければ分からないことも多い。ただ、ネットでの選挙戦が解禁になれば、政治家もいよいよ迂闊な約束や行動はできなくなることだけは確かだ。ネットで発信した言動は日本国内に留まらず、世界に発信されてしまうからだ。(編集担当:藤原伊織)