街でよく見かける電動車いすは、障がい者やお年寄りの生活に欠かせない存在として活躍しているが、交通事故が後を絶たない。2011~15年の推移をみると、年間180件前後発生している。衝突回避自動ブレーキシステムなどの「自動運転機能」の普及を期待したい。
街でよく見かける電動車いすは、障がい者やお年寄りの生活に欠かせない存在として活躍しているが、交通事故が後を絶たない。電動車いすの交通事故件数は、2011~15年の推移をみると、年間180件前後発生している。道路交通法では、電動車いす利用者は歩行者として扱われるため、利用者の単独事故、歩行者との衝突事故、電動車いす同士の事故は交通事故件数に含まれない。実際にはもっと多くの人が電動車いすの事故で死傷しているのだ。
警察庁が公開している「電動車いすの安全利用に関するマニュアル」では、具体的な事故事例が紹介されている。「安全確認が不十分のまま横断しようとして事故にあった」「ぼんやりしていて通行していたところ自転車に衝突して負傷させた」「ベビーカーと衝突して赤ちゃんが負傷した」など、不注意による事故が目立つという点では自動車と共通するものがある。
そこで、広がりを見せているのが衝突回避自動ブレーキシステムなどの「自動運転機能」だ。自動運転機能といえば、自動車業界においてもホットな話題である。砂ジャリ道やある程度の段差があっても進行できる電動車いす「WHILL(ウィル)モデルA」を販売するウィル<3241>は、パナソニック<6752>と共同で衝突回避システムを開発中。自動車とは違い、前方だけでなく左右から来る人間にも注意しなくてはならないという開発上の難しさがあるものの、1~2年後の実用化を目指すとのこと。
自動運転機能は電動車いす以外にも、搭乗型移動支援ロボットに採用する動きが拡大しつつある。ベンチャー企業や大手自動車部品メーカーなども、パーソナルモビリティ(1人乗りの移動機器)の普及が期待される20年の東京五輪・パラリンピックまでの実用化を目指している。安全性と機能面で差別化を図り、国内外にアピールしたい考えだ。
現在は「便利だけど危険」がまかり通っているが、自動車をはじめバイクや電動車いす、自転車にも自動運転などの安全機能が普及すれば、状況が大きく変わるに違いない。(編集担当:久保田雄城)