高齢化社会の最新技術。介護の軽減、事故の予防に役立つ最先端の技術

2016年04月23日 19:17

 「少子高齢化」という言葉を目にする機会は、ここ数年で確実に増えたものの、実感として認識している人は未だ少ないのではないだろうか。町を歩けば子供や若者たちも溢れているし、高齢者の数も劇的に増えたようには思えない。しかし、実際問題として、日本の人口減少は加速しており、すでに待ったなしの状況に置かれていることを忘れてはならない。

 NHKが実施した統計調査によると、自宅介護家族は160万人。自宅介護の為に仕事の離職を余儀なくされた人は39万人にも上るという。また、現在、全国で介護に携わっている人は557万人いるといわれているが、その約5割が60歳以上で、老々介護になっているのが現状だ。

 とはいえ、人口の増減は一朝一夕のものではない。今、政府でも様々な少子化対策がとられているが、たとえそれらが上手く機能したとしても、実際の社会に反映されるのは数十年後。それまでの介護問題の解決には及ばないのだ。

 そこで期待されているのが、ロボットや最先端の医療・介護設備の技術だ。例えば、昨年、海外諸国でも注目されているロボットスーツ「HAL」シリーズでしられるサイバーダイン株式会社<7779>が、神奈川県の進めるヘルスケア・ニューフロンティア事業と連携強化することを発表し話題となった。神奈川県は「HAL介護支援用(腰タイプ)」を県内30ヵ所の介護施設に3台ずつ計100台を導入し、6月から配備している。

 また、近年はタブレットPCやインターネットの活用も増えており、それに伴って、ロボットのみならずICT福祉機器の進歩も目覚ましい。例えば、視線追跡(アイトラッキング)技術で世界シェアトップのTobii Technology社(本社、スウェーデン)の「マイトビー」は、ただ画面上の文字を目で見るだけで会話をしたり、インターネットやメールなどのコミュニケーションツールが使用可能になるデバイスで、もともとは重度障害者用の意思伝達装置だが、寝たきり生活を送らざるを得なくなった高齢者にも有効なデバイスとなるだろう。

 また、ユニバーサルデザイン協創フォーラム開発が視覚障がい者向けに開発した「Barcode-Talker(バーコード トーカー)」は商品に付属しているバーコードやQRコードを携帯やスマホのカメラで読み取ると音声で商品情報を知らせてくれる技術だが、これも視覚障がい者に限らず、高齢者用途にも活用できそうだ。

 住友理工株式会社<5191>の「SRソフトビジョン」に使用されている同社独自のオールゴムの触覚センサーも、今後の高齢化に必要な技術として注目しておきたい。「SRソフトビジョン」は、手軽に体圧分布を測定できるツールで、車イスや介護ベッドに使用することによって、クッションなどの体圧分散性能が一目瞭然にわかるシステムだ。車イスの適切なシーティングや寝たきり患者の床ずれ防止にも役立ち、要介護者の負担を可視化することで、介護の無駄が少なくなることはもちろん、介護する側もされる側もコミュニケーションが取り易くなることが期待されている。

 住友理工では、SRセンサー技術を応用し、自動車を運転するドライバーの姿勢や呼吸、心拍数などを監視するモニタリングシステムの開発も始めている。カーナビなど車載設備と連携することで、運転手の疲労度合いや眠気などをモニタリングし、警告することが可能になるという。

 近年は高齢者や要介護者による痛ましい事故のニュースが後を絶たない。しかし、一方では老々介護の観点からも、とくに田舎では高齢者でも車がないと生活がままならない事情もある。悲しい交通事故の減少と、高齢者でも安心して自動車が利用できる社会づくりには欠かせない技術になりそうだ。

 人生60年といわれたのは昔の話。昨年、厚生労働省の発表による最新の日本人の平均寿命は、男性が80.50歳、女性が86.83歳で共に80歳を超えている。しかし、これは本来、嘆くことではなく、喜ぶべきことのはずだ。世界に先駆けて超高齢化社会に突入した日本だからこそ、優れた技術力で、世界で最も高齢者が住み易い、充実した社会を目指したいものだ。(編集担当:藤原伊織)