2012年の通年の消費者物価指数(CPI)はマイナス0.1%とデフレが続き、総務省の家計調査の実質消費支出は、9月、10月、12月は対前年比でマイナスになり、個人消費は秋から冬にかけて不振をきわめた。内需型企業にとっては厳しい環境が続き、それは各社の4~12月期決算にもあらわれている。
食品のカゴメ<2811>は、売上高は11%増の1532億円、営業利益は24%増の100億円、純利益は73%増の71億円。トマトジュースの販売は7割増で野菜飲料「野菜生活」も好調。トマトの自社栽培・出荷の事業も黒字転換し、海外子会社の赤字縮小も寄与した。増収増益の通期業績見通しは据え置いたが、年間配当を18円から20円に上方修正した。
ヤクルト本社<2267>は、売上高は1.2%増の2429億円、営業利益は6.5%減の178億円、純利益は8.7%増の142億円。「ジョア」を刷新し高機能の「ヤクルト」が伸びたが、薬価改定で医薬品の売上が約1割減。それでも海外はアジアで販売好調だった。増収増益の通期業績見通しは据え置き。
JT<2914>は、売上高は4.0%増の1兆6083億円、営業利益は13.2%増の4116億円、純利益は14%増の2637億円。国内販売が震災後の落ち込みから回復し、海外販売もロシアやトルコなどで伸びた。通期業績見通しは売上高で250億円、営業利益で180億円、純利益は120億円、それぞれ上方修正。年間配当は従来見通しの60円から5円上乗せして65円とし、前期比で実質15円増配になる。
情報・通信は、特にモバイルでしのぎを削る3社で明暗が分かれた。NTTドコモ<9437>は、営業収益が6.2%増の3兆3707億円、営業利益が5.6%減の7021億円、純利益が5.5%増の4164億円。アップルの「iPhone」を扱う他社に顧客が流れ約98万件の転出超過。それを食い止めるためにキャッシュバックなどの販促費を前年同期の8%増にしたため、営業利益が圧迫された。営業収益増、営業利益減の通期見通しは据え置いた。
KDDI<9433>は、営業収益は2.5%増の2兆7105億円、営業利益は3.0%増の3955億円、純利益は7.3%減の1802億円。「iPhone5」が好調でau携帯電話の契約純増数はドコモの2倍の約170万件になり、売上と営業利益の増加に寄与した。通期業績見通しは、営業収益は500億円、営業利益を50億円上方修正したが、純利益は150億円下方修正。なお、1→2株の株式分割を発表している。
ソフトバンク<9984>は、売上高は5%増の2兆5097億円、営業利益は13%増の6001億円で過去最高を更新したが、純利益は6%減の2353億円。ここも「iPhone5」が好調で携帯電話の10~12月の契約純増数は約86万件で、3社の中で首位だった。通期業績見通しは「営業利益は7000 億円を確実に超過すると見込む」という表現だけで、具体的な数値を公表しなかった。スプリント買収は2013年半ばに完了する予定。
ヤフー<4689>は、売上高は10.3%増の2450億円、営業利益は11.7%増の1354億円、純利益は14.0%増の831億円。10~12月期のスマホ向けのネット広告の売上が前年同期の3倍強に急成長したのが貢献した。通期業績見通しは売上高、営業利益、純利益とも上方修正し、16期連続で過去最高を更新する。年間配当も従来予想よりも増やす。
ユニチャーム<8113>は、売上高は15.4%増の3644億円、営業利益は11.5%増の455億円、純利益は105.5%増の298億円。アジアを中心に海外で紙おむつや生理用品の販売が好調で、23億円の為替差益の発生も利益を押し上げた。国内では生理用品や乳幼児用紙おむつは苦戦したが、大人用紙おむつは売上が1割弱伸びている。増収増益の通期業績見通しは据え置きとしたが、最大110億円の自社株買いを実施すると発表した。
丸井G<8252>は、売上高は1.5%減の3020億円、営業利益は21.7%増の180億円、純利益は151.3%増の96億円。秋に残暑が長引いた影響で秋物衣料の販売がふるわなかったが、プライベートブランド商品の販売が好調で収益性が改善した。減収増益の通期業績見通しは据え置きとした。
JR東海<9022>は、売上高は6.9%増の1兆1995億円、営業利益は15.8%増の3716億円、純利益は48.8%増の1827億円。主力の東海道新幹線のビジネス利用が前年並以上を維持し、東京スカイツリー開業で首都圏への観光需要も好調など運輸収入が堅調に推移。子会社の百貨店の増収や長期債務の削減による支払利息の圧縮も寄与した。通期業績見通しは増収増益で据え置きとした。
JR東日本<9020>は、売上高は6.3%増の2兆13億円、営業利益は14.3%増の3682億円、純利益は77.3%増の1803億円。復興需要や観光キャンペーンが寄与して東北新幹線が好調で新幹線の運賃収入は15%増。首都圏在来線も東京スカイツリーなどの集客効果が出るなど堅調に推移した。増収増益の通期業績見通しは据え置きとした。
オリエンタルランド<4661>は、売上高は13%増の3051億円、営業利益は29%増の733億円、純利益が73%増の468億円で、いずれも過去最高。新アトラクションや季節イベントが好評で順調に集客でき、ランドもシーも入園者数が前年同期を上回り、飲食やグッズ販売も伸び、平均客単価も前年同期を上回った。震災に伴う損失計上もなくなった。増収増益の通期業績見通しは据え置いている。
東京ガス<9531>は、売上高は14.1%増の1兆3354億円、営業利益は約14.2倍の990億円、純利益は640億円(前年同期は10億円の赤字)。電力事業やLNG販売が好調で12月の低温も使用量増に貢献したが、通期では円安デメリットが直撃し利益が圧縮される。通期業績見通しは、売上高は440億円上方修正するが、営業利益は100億円、純利益は60億円それぞれ下方修正する。想定為替レートはドル円を90円に変更した。
各社の決算内容がそれほど悲観的なものではないのは、景気後退や反日デモで大規模な需要の消失が起きた中国市場などと違い、デフレ、デフレと言われても国内の消費市場は底堅いおかげだろう。鉄道のように、震災の影響が大きかった前年同期が悪すぎたから増収増益という企業もある。携帯電話などは「iPhone」人気に相当引っ張られているが、ユニクロの「ヒートテック」や「東京スカイツリー」のように、ヒット商品が出てくればその波及効果も出て、それなりにいい結果を出せる。2013年、内需型企業はヒット商品を出して、需要を創り出して、国内市場を活性化できるだろうか。それとも、大きく動いたのは消費税増税前の駆け込み需要だけだったという結果に終わってしまうのだろうか。(編集担当:寺尾淳)