近年、将来的な人口動態や地方創生の観点から地域金融機関を中心とする銀行の収益確保、店舗展開の動向が注目されるとともに、地方銀行を中心とした再編のニュースが続いている。そうしたなか、今年に入り日銀がマイナス金利導入を決定し、実体経済への資金供給を促しているが、イギリスのEU離脱や三菱自動車工業の燃費不正問題など、企業の設備投資や事業展開に影響を与える大きな出来事が続いており、各銀行の貸出金、収益の動向にも注目が集まる。
帝国データバンクは、国内主要112行(大手銀行7行、地方銀行64行、第二地方銀行41行)の2015年3月末および2016年3月末時点の預金、貸出金の残高および2015年3月期、2016年3月期の預金利息(支出)、貸出金利息(収入)の推移について調査・分析した。
2016年3月末の国内主要112行の預金は687兆6083億3900万円となり、2015年3 末比で29兆3758億5100万円増加(4.5%増)した。大手銀行、地方銀行、第二地方銀行の3業態すべてで増加し、大手銀行(23兆3113億4200 万円増、6.6%増)の増加率が目立ったほか、増減の内訳は、大手銀行(増加7 行)、地方銀行(増加57行、減少7行)、第二地方銀行(増加36行、減少5行)となり、112行中100行(構成比 89.3%)で増加した。
また、112行が2016年3月期(1年間)に預金者へ支払った預金利息は5759 億6700万円となり、2015年3月期比で856億4500万円増加(17.5%増)。3 業態すべてで預金が増加するなか、大手銀行(898億5200万円増、29.4%増)、地方銀行(7億5200万円増、0.6%増)は預金利息が増加したが、第二地方銀行(49億5900 万円減、9.2%減)は減少した。
2016年3月末の112行の貸出金は493兆6298億6300万円となり、2015年 3月末比で12兆5761億1000万円増加(2.6%増)した。3業態すべてで増加し、大手銀行(1.8%増)と比較して地方銀行、第二地方銀行(ともに 3.6%増)の増加率が目立ったほか、増減の内訳は、大手銀行(増加5行、減少2行)、地方銀行(増加61行、減少3行)、第二地方銀行(増加39行、減少2行)となり、112行中105行(構成比93.8%)で増加した。
また、112行が2016年3月期(1年間)に融資先から受け取った貸出金利息は6兆2620億1100万円となり、2015年3月期比で1324億6700万円減少(2.1%減)。3業態すべてで貸出金が増加したものの、貸出金利息は3業態すべてで減少した。
2014年3月期以降の112行の預金、貸出金の増加率をみると、2014年3月期、2015年3月期は預金、貸出金ともに 4%台の推移となっていた。しかし、2016年3月期の貸出金の増加率は2.6%と大幅にダウン。預金が増加し続けるなか、少子高齢化による企業数の減少もあり、融資先の発掘・選定に苦慮している様子がうかがえるとしている。
2016年3月期の 112行の収支<貸出金利息(収入)-預金利息(支出)の差額=本業利ざや>は、5兆6860億4400万円となり、2015年3月期比で2181 億1200万円減少(3.7%減)した。3業態すべてで減少し、大手銀行(4.9%減)の減少率が目立ったほか、増減の内訳は、大手銀行(増加2行、減少5行)、地方銀行(増加7行、減少57行)、第二地方銀行(増加7行、減少34行)となり、112行中96行(構成比85.7%)で減少した。(編集担当:慶尾六郎)