「休む」ことは罪悪? 美徳? 休暇を奨励しはじめた日本の先進企業

2016年06月04日 19:18

 1960年代。日本は海外諸国にも類を見ない急速な経済成長を遂げた。いわゆる「高度経済成長期」といわれるこの時期、日本の経済成長率は年平均10%を超えた。石炭から石油へのエネルギー転換をはじめ、政府が打ち出した所得倍増方針、あらゆる分野での技術革新、流通革命など、背景には様々な要因が挙げられるが、飛躍的な経済成長の最も大きな原動力は、何を置いても、日本人の勤勉さと寝る間も惜しんで働いた労働姿勢だろう。

 日本人にとって「働くこと」は美徳であり、「休まない」のが当たり前だった。有給休暇も形だけはあるものの、それを率先して活用し、消化することは、なかなか勇気のいることだ。フレックス・育休・産休・サマータイムなど、政府もいろいろな施策をすすめているものの、今でも40代以上の中高年はとくに、休暇制度を利用することに抵抗感や罪悪感を抱いてしまう人は少なくないだろう。

 しかし近年では、働きすぎる日本人の休暇を見直そうという動きも活発になっている。厚生労働省が発表した平成26年就労条件総合調査結果によると、1日の所定労働時間は、1企業平均7時間43分(前年7時間44分)、労働者1人平均7時間44分(同7時間45分)となっている。また、平成25年(又は平成24会計年度)の年間休日総数の1企業平均は105.8日(前年105.4日)、労働者1人平均は112.9日(同112.6日)。産業別では、金融業、保険業が120.9日(同118.0日)で最も多く、宿泊業、飲食サービス業が93.5日(同95.6日)と最も少なくなっており、わずかではあるものの、いずれも前年度よりも改善されていることが分かる。

 先進的な企業は、長期休暇を推奨する取り組みや特別な休暇制度の導入にも積極的だ。

 例えば、住宅メーカーのアキュラホームでは、社員自身とその家族の幸せな生活実現のために、社員全員が、連続9日間の休みを取得する活動を推進している。そのために 営業所でカレンダーを作成し、全員で共有したり、引継資料を課全員に共有し、全員でサポートするなど、休暇を取り易い環境づくりに努めているという。

 また、ただ休暇を取るだけでなく、電子・セラミック製品の開発・製造会社であるイビデン<4062>では、社会貢献委員会を設置し、「ボランティア休暇」といわれる年間7日間の特別有給休暇を導入して、社員の社会貢献活動を後押しする活動を行っている。さらに、株式会社 東邦銀行の、孫のために休む「イクまご休暇」や、兵庫県で6店舗の美容室を展開する株式会社 チカラコーポレーションの「失恋休暇」のようなユニークな休暇制度を導入する企業も増えている。

 「もはや戦後ではない」といわれた高度成長期。あれからもう40年以上が経つ。それこそ「もはや高度成長期ではない」のだ。休むことが罪悪という世の中から、休むことが美徳の世の中へ、そろそろ転換しても良いのではないだろうか。(編集担当:藤原伊織)