医療分野でのビッグデータ解析と診療への活用は、早い段階で実用化が期待される分野の一つだ。医師専用コミュニティサイト、メドピアによる3,701人の医師へのアンケートで「人工知能が診療に参画する時代は来るか?」という質問に対して9割の医師が「来る」と回答している。そのなかでも最も多かった回答が「10年超20年以内」だが、一部の分野ではすでに診療に人工知能を役立てる未来がすぐそこまで来ている。
トプコンは6月24日、グループ会社2社とともに、米IBMとの眼科領域におけるパートナーシップを結んだ。これによりIBMのWatson Healthを活用したシステム開発が可能となる。トプコンの眼科診断機器は業界に普及しており膨大な診断データを生み出している。これに加えてグループ会社(ドイツifa systems、米Inoveon)の眼科用電子カルテ、遠隔診断システムによって日々生み出される診断データをWatson Healthに蓄積し、診断や治療、患者のケアを向上するための活用を目指す。
IBMは2015年4月にWatson Health部門を立ち上げ、これまでApple Watchなどのウェアラブルデバイスでのデータの収集と解析、ゲノム解析、医療データの収集と解析などを行ってきた。最近では、がんの正確な診断や糖尿病患者のグルコース量モニタリングアプリ開発など、実用的な活用で注目を集めている。
Watsonのコグニティブ・システムは自然言語を理解し、論文、画像や臨床データといった様々な種類の構造化・非構造化データから専門的な知識を学習していく。増え続けるこうした医療データを、人間が正確に処理していくことは不可能だ。今後はさらに人間との会話が可能になり、個人の診断データから分析して根拠にもとづいた選択肢・レコメンデーションを提示するようになるという。これによって「医療サービスの質のばらつき、技術の高い医療従事者の不足、医療コスト増大、医療制度の複雑化、医療の需要増大、医療機器の導入費用増大」といった課題解決に繋がる。
医療データを扱う上でのプライバシーの問題などクリアすべき課題はありそうだが、診療の場面で当たり前のように人工知能の診断に頼る時代は近い。(編集担当:久保田雄城)