超高齢化社会が進み、ますます医療・福祉サービスに対する需要が増す中、全国的に医療資源が不足している。特に地域においての医療提供体制の脆弱性については社会的な課題となっている。これを解決するため「スマートプラチナ社会」のビジョンを掲げ、健康・医療・介護分野のICT化促進に官民挙げて取り組んでいる。
遠隔診療サービスの国内市場規模に関して6月10日、シード・プランニングによるオープンデータの収集分析やサービス事業者・医療関係者への訪問取材で明らかになった。この調査によれば、遠隔診療サービスの国内市場規模は2016年度の約77億5000万円から、20年度には約192億円と2.5倍の成長が見込まれるという。遠隔診療関連サービスのうちわけとして遠隔診療と健康相談サービスがあり、その比率は16年度で遠隔診療が約30%、健康相談サービスが約70%と推定される。20年度にかけて遠隔診療の比率が約40%に高まると予測される。
15年8月10日に厚生労働省によって「情報通信機器を用いた診療(いわゆる「遠隔診療」)について」が発表され、遠隔診療が法に抵触するものではないことが明示されて以来、遠隔診療サービスへの企業の参入が相次いでいる。ポートはいち早くサービスを立ち上げ、スマートフォンなどを用いて医師の診療が受けられる「ポートメディカル」を展開している。またMRTはオプティムと共同で遠隔診療・健康相談サービス「ポケットドクター」を発表している。
いっぽう医療のICT活用を実現するにはまだ様々な課題がある。物理的なネットワークインフラ・システムの構築や費用負担含む運用体制の制定、デジタルデータの標準化や医療情報取扱ルールの調整、デジタルデータを実際に活用する組織の編成、AI活用含む最先端のICT技術の導入など、現在も医療のICT活用促進に向けてワーキンググループなどによる具体的な検討が進められている。
こうした企業や政府の叡智を結集した取り組みとICT技術の進歩があって初めて高度な医療のICT化が実現できると考えられる。(編集担当:久保田雄城)