人工知能を活用した「幸福感」の向上とは?

2016年07月04日 08:06

 近年、幸福感の向上は社会における最も重要な課題の一つとなっている。また、企業においては、さらなる生産性向上に向けて、従業員一人ひとりの強みや個性を生かす新しい経営が求められている。

 これを受け、日立製作所<6501>能技術を活用し、働く人の幸福感の向上に有効なアドバイスを、各個人の行動データから日々自動的に作成する技術を開発し、日立グループの営業部門の人財約600人を対象に試行(実証実験)を開始した。

 具体的には、各個人の大量の行動データを名札型ウエアラブルセンサーから取得し、人工知能「Hitachi AI Technlogy/H」(H)で分析し、職場でのコミュニケーションや時間の使い方など、一人ひとりの幸福感の向上につながる行動についてのアドバイスを自動的に作成および配信。利用者は、スマートフォンやタブレット端末から日々のアドバイスを確認し、職場での行動に活用することができるという。

 日立は、人や組織の活性度、幸福感と、生産性の関係性に着目し、研究を重ねてきたという。2015年には、名札型ウエアラブルセンサーで取得した行動データ(身体運動の特徴パターン)から、組織の生産性に強く相関する組織活性度および幸福感(ハピネス度)を計測する技術を開発した。また、新たに開発したHを活用し、企業の経営課題解決を支援するサービスの提供も開始した。

 これまで、組織活性度および幸福感の向上というテーマでは、三菱東京UFJ銀行や日本航空など、13社で実証実験またはシステム導入を行っており、コールセンターにおける実証実験では、従業員の平均ハピネス度が高め(平均値以上)の日は低め(平均値以下)の日に比べて1日あたりの受注率が34%高いことが明らかになるなど、人や組織の活性度、幸福感が、生産性に大きく影響することを実証するとともに、さまざまな企業、職場への展開を進めてきた。

 今回新たに、名札型ウエアラブルセンサーから収集した行動データを時間帯・会話相手などの項目で細分化し、これをHに入力することで、各個人にカスタマイズされた幸福感向上に有効なアドバイスを日々自動的に作成、配信する技術を開発した。利用者は、スマートフォンやタブレット端末上で、「Aさんとの5分以下の短い会話を増やしましょう」、「上司のBさんに会うには午前中がおすすめです」など、職場でのコミュニケーションや時間の使い方に関する多様なアドバイスを、日々確認できる。このアドバイスを実行することで、従業員一人ひとりの幸福感が高まり、それに伴い、生産性も向上することが期待される。なお、プライバシーに配慮し、個人のデータは他者からは閲覧できない形で管理するという。今回、日立は、グループ内の営業部門約600名を対象に試行を開始し、導入効果や運用上の課題などを検証していく方針だ。

 いよいよ人工知能の活用が人の「幸福感」にまで及んできた。将来的に人の仕事が人工知能に奪われ、失業が増えるといった予測もあり、ここまでくると何だか怖い気もしてくるのは筆者だけだろうか。 (編集担当:慶尾六郎)