理系での人材不足が深刻だ。IT業界でいえば現時点で国内で17万人の人材が不足しており、2030年には78.9万人が不足するとの予測がある。また男女共同参画が叫ばれるなか、女性の社会進出にはいまだにハンディが大きく、女性の管理職の割合は30%を超える国が多い中、日本では10.6%と低い水準でとどまっている。そんななか、理系の人材不足を女性のキャリア促進で補おうとする動きがある。米ジョンソン・エンド・ジョンソン(以下J & J)は世界の学術機関とパートナーシップを結び、理系分野におけるダイバーシティを推進すべく理系分野の女性増員に対する取り組みや、女性研究者の活躍支援などを行っている。
このたびJ & Jは、理系分野での女性の活躍推進を目的としたプログラムにおいて東大とパートナーシップを結んだ。このプログラムは、2つのプロジェクトで構成されており、「”Rikejo”Initiative」では、東京大学理学部、工学部、医学部、薬学部、農学部の女子学生に対して選考を行い、女性トップリーダーとの交流、最先端の研究施設視察といった趣旨での海外研修の機会を設ける。「女子中高生アウトリーチ」は女子中学生、女子高校生を対象にしたプログラムで、東京大学とJ & Jが協働で、東京大学の理系学部の魅力や、理系の職業のやりがいやキャリアについて情報を提供することで理系への進路選択を支援する。
ダイバーシティを推進し人材育成を担うプログラムは、様々な企業が質の高いものを提供している。日本マイクロソフトは女性や遠隔地在住者、障がい者、若年無業者にプログラミング授業を提供する教育施策「Microsoft YouthSpark: Programming for all ~全ての子ども・若者に~」を7月1日から提供開始する。また、P&Gジャパンは、同社が3月に立ち上げた「P&Gダイバーシティ&インクルージョン啓発プロジェクト」を企業向けに展開し、性別や国籍、年齢など多様な人材を活用したダイバーシティ経営の普及を支援する。
昨年8月に成立した女性活躍推進法が今年度から本格始動しており、女性にとって働きやすい職場環境整備への取り組みがなされているが、管理職への女性進出に関しては2020年までの30%を達成するのは難しいとする意見もある。女性が本当の意味で活躍するためには、子育てに関する制度づくりや企業への目標値設定義務化などと同時に、早い段階から実施される技術的な教育や啓発がネックになると考えられる。(編集担当:久保田雄城)