不振のマツダを救うクリーンディーゼル拡充と「G-Vectoring Control」投入、新型アクセラ

2016年07月30日 20:01

Mazda Axela

ビッグマイナーチェンジを受けたマツダ・アクセラ。写真は2.2リッターディーゼル搭載のアクセラ・スポーツ「22XD L Package」、価格は308.88万円(FF車)

 マツダは、同社のスポーツコンパクト「マツダ・アクセラ」の大規模マイナーチェンジを実施し、発売した。

 注目点は、同社のデミオやCX-3に載っている1.5リッター・クリーンディーゼルエンジン「SKYACTIV-D 1.5」搭載車を追加したこと。これでアクセラは、既存の「SKYACTIV-D 2.2」と2種類のクリーンディーゼルエンジン搭載車となり、クリーンディーゼルのラインアップを拡充した。その一方で、2リッターガソリンエンジン車を廃止した。1.5リッターディーゼルは、5ドアHB車に設定となる。

 1.5リッターディーゼルの最高出力はデミオと同等の105psだが、最大トルクは27.5kg.mで、デミオの22.4kg.m(MT車)/25.5kg.m(AT車)に比べて大幅なトルクアップを果たした。

 1.5リッターディーゼル車の価格は、230.364万円から268.92万円。2.2リッターディーゼル車の価格は278.1万円から331.02万円なので、クリーンディーゼル車が、ずいぶんと身近になったといえそうだ。

 今回アクセラの大幅改良は、エンジン、トランスミッション、ボディ、シャシーなどのSKYACTIV技術群を統合的に制御することで、「人馬一体」の走行性能を高める新世代車両運動制御技術「SKYACTIV-VEHICLE DYNAMICS(スカイアクティブ・ビークルダイナミクス)」の第一弾「G-Vectoring Control(G-ベクタリングコントロール)」や、クリーンディーゼルエンジン「SKYACTIV-D」のノック音自体を抑制し、心地よいエンジンサウンドを追求した「ナチュラル・サウンド・周波数コントロール」などを初採用。「人間中心の開発哲学」に基づき、あらゆる領域で改良を図った。

 世界初とされる注目の「G-Vectoring Control」は、「エンジンでシャシー性能を高める」という発想から生まれ、ドライバーのステアリング操作に応じてエンジンの駆動トルクを緻密に変化させることで、横方向と前後方向の加速度を統合的にコントロール。四輪タイヤの接地荷重を最適化して人間の身体感覚に合った自然で滑らかな車両挙動を実現する制御技術だ。常域から緊急回避シーンまで一貫した制御効果を付加し、あらゆるドライバーへ運転の安心感を提供するシステムだ。タイヤの接地荷重状態の最適化で、車両がよりドライバーの意図どおりに動くようになり、無意識をも含めたステアリング修正舵が減少。抜群の接地性による運転の楽しさや安心感が向上する。また、乗員にかかる加速度(G)の変化がよりスムーズとなり、体の揺れが減り、乗り心地も改善する。降雪、降雨時などの滑りやすい路面でより高い効果を発揮し、操縦安定性が向上するという。

 また、ディーゼルエンジンにも改良を加えた。ノック音の原因であるエンジン燃焼による圧力波(エンジン加振力)と、部品の共振周波数(構造系共振)との関係に着目し、特に音量が大きい周波数帯別に静粛性を向上させる技術を標準装備化し、ディーゼルエンジンのノック音自体を抑制し心地よいエンジンサウンドを追求した。

 まず、周波数帯3.6kHz付近のノック音の原因である燃焼時のピストンとコネクティングロッドの振動を減衰させるピストンピンに組み入れたダンパー「ナチュラル・サウンド・スムーザー」を採用した。

 同時に、周波数帯1.3kHz、1.7kHz、2.5kHz付近で発生するノック音は、エンジン加振力と構造系共振のピークが重なる事で増幅していることが判明したため、燃料噴射タイミングを0.1ミリ秒単位で制御し、エンジン加振力を構造系共振と逆位相にさせノック音を低減する「ナチュラル・サウンド・周波数コントロール」を投入した。

 安全性の向上もポイントだ。まず、アクティブドライビングディスプレーの視認性を向上させ、その画面に速度標識を表示させる交通標識認識システムを採用した。また、夜間視認性を高める「アダプティブ・LED・ヘッドライト(ALH)」を「15C」「15S」「15XD」「HYBRID-C」以外の全車に採用した。

 ブレーキ自動制御で衝突被害を軽減する「アドバンスト・スマート・シティ・ブレーキ・サポート」は、近赤外線レーザーセンサーだった検知デバイスをフォワード・センシング・カメラに変更。検知対象を車両だけだったものから、歩行者まで拡大している。また、作動速度域を約4~30km/hから、車両検知で約4~80km/h、歩行者検知で10~80km/hまで拡大し、危険回避能力を高めた。

 今年1月-6月のマツダ新車販売は、前年同期比で22%のマイナスと苦戦が続く。走りの質感向上やクリーンディーゼル拡充で商品力をアップしたアクセラが、今年後半の業績アップの試金石となりそうだ。果たして、「SKYACTIV-VEHICLE DYNAMICS」の第一弾「G-Vectoring Control」は、消費者に受け容れられるか?(編集担当:吉田恒)