【電子部品業界の2016年4~6月期決算】アップルのスマホ減産と円高で業績が悪化したが、アップルだけを頼りにはしない

2016年08月12日 07:39

 ■「iPhone7」に期待はするが、それに依存しない体質に改善中

 電子部品メーカー各社の2017年3月期の通期業績見通し、年間配当予想は、日本電産が4月に発表した米国会計基準による通期連結業績予想を国際会計基準(IFRS)によるものに差し替えた以外は、上方修正も下方修正もなかった。

 日本電産は売上高6.1%増、営業利益10.3%増、税引前利益10.7%増、最終当期利益8.7%。4月に前期の通期決算を発表した際に出していた米国会計基準による連結業績予想を、国際会計基準(IFRS)による連結業績予想に差し替えた。通期の想定為替レートは4月時点の1ドル110円から105円へ、1ユーロ120円から115円へ、それぞれ5円、円高方向に修正している。1円の円高は対ドルで11億円、対ユーロでは3億円の営業減益要因と想定しているが、最終利益は4期連続で最高益を更新する見通しで、予想年間配当も80円に据え置いた。車載モーターの受注が想定を上回るなど自動車向け製品が好調で、中国では生産ラインを自動車部品用へ切り替えたりしている。ロボットやドローン向けの市場開拓にも力を入れている。

 京セラは売上高2.7%増、営業利益18.7%増、当期純利益22.1%減の増収、最終減益見通しで修正なし。前期比横ばいの予想年間配当100円も変わらない。しかし、通期の想定為替レートをドル円もユーロ円も5円、円高方向に見直し、ドル円は105円、ユーロ円は115円とした。下半期に希望があるとすればスマホと複写機で、スマホは秋のアップルの「iPhone7」の発売に向けた生産の回復に、7~9月期に半導体パッケージや高周波部品などの納入が増える期待をかける。複合機など情報機器事業は新製品の投入による増収、太陽光パネルも海外を中心に回復を見込む。最終利益の大幅減益は、前期にKDDI株売却益を計上した反動。

 アルプス電気は第1四半期の進捗率が悪いが、売上高2.2%減、営業利益11.1%減、経常利益8.1%減、当期純利益18.0%減の減収減益見通しには修正なし。5円増配して30円の年間配当予想も変えなかった。想定為替レートもドル円110円で据え置き。円高は約100億円の営業減益要因だが、秋発売のアップルの「iPhone7」に期待をかける。その一方で自動車向け部品の生産体制の強化を着々と進めており、チェコ、メキシコなど海外工場では合計約1000人を増員している。

 日東電工は売上収益2.9%減、営業利益12.1%減、税引前利益11.8%減、当期利益14.6%減、最終当期利益14.3%減の減収減益、予想年間配当140円の見通しに変更はなかった。大型液晶向け偏光板やタッチパネル部材の売上高は12%減と予測される一方、核酸医薬の受託製造は売上高29%増を見込んでいる。

 村田製作所は「ムラタ・ショック」を招いた売上高1.2%増、営業利益12.9%減、税引前当期純利益13.7%減、最終当期純利益12.6%減という5期ぶりの最終減益に修正なし。10円増配の220円の予想年間配当も変わっていない。想定為替レートもドル円110円で据え置き。第1四半期の決算発表と同時にソニー<6758>の電池事業を買収すると発表した。10月中旬をメドに契約を締結し、2017年3月末までに買収作業を終える予定。赤字事業とみられているが、車載用電池のような有望な分野もある。

 TDKは売上高0.7%増、営業利益20.8%減、税引前当期純利益20.5%減、最終当期純利益22.9%減の増収、大幅減益見通しに修正なし。120円の予想年間配当も変えていない。秋発売のアップルの「iPhone7」には期待しているが、パソコン需要の落ち込みでHDD向け部品は販売の減少が続くと見込んでいる。TDKはM&Aでスマホ、自動車、産業機器向けのセンサー事業の強化を進めており、3月のスイスのミクロナスセミコンダクタホールディング買収に続き、8月にはフランスのトロニクスマイクロシステムズの買収を発表した。買収額は最大4865万ユーロ(約55億円)。同社はスマホ用の加速度センサー、ガスセンサー、赤外線センサーなどを製造している。(編集担当:寺尾淳)