【自動車部品業界の2016年4~6月期決算】為替の円高という状況は共通でも、主力製品の違いによって業績に強弱の差が出た

2016年08月04日 07:18

 8月1日、自動車部品大手7社の2016年4~6月期(第1四半期)決算が出揃った。

 四半期の業績を左右したのは、何と言っても為替の円高だった。4~6月期の平均為替レートはドル円が108円、ユーロ円が122円で、前年同期比でドル円は13円、ユーロ円は12円も、円高が大きく進んだ。そのあおりでデンソーは通期業績見通しを下方修正したが、トヨタ紡織は逆に上方修正した。

 トヨタの世界戦略に組み込まれているトヨタ系部品メーカー5社の業績は、電装品のデンソーが減収、2ケタ減益、自動変速機のアイシン精機が増収、2ケタ増益、フォークリフト、エアコン部品、エンジンの豊田自動織機が減収、2ケタ減益、シートのトヨタ紡織が減収、2ケタ営業・経常増益、最終減益、ステアリング、ベアリングのジェイテクトが減収、2ケタ最終減益とまちまち。為替の円高という状況は共通でも、主力製品の違いによって強弱の差が出ていた。ベアリング、パワステなどの独立系の日本精工は減収、2ケタ減益と悪かったが、ラジエーターなどの日産系のカルソニックカンセイは減収、営業増益、経常減益、最終増益という、数字では良いのか悪いのかわかりにくい決算だった。

 2016年3月期は7社全て増収だったが、2017年3月期の業績見通しは各社とも為替の円高状況が続くと想定して減収、減益など保守的な数字が並んでいる。自動車(完成車)の販売台数は、国内は6月の消費増税の延期決定で増税前の駆け込み需要がなくなって今期通してふるわない見通しだが、海外では北米、ヨーロッパ、アジアに伸びている地域もある。外貨建ての海外売上が円ベースで目減りするために為替の円高は痛いが、自動車部品メーカーの市場環境がひどく悪化したわけではない。

 ■欧米、アジアでは自動車販売が伸びている地域もある

 2016年4~6月期の実績は、デンソー<6902>は売上収益1.2%減、営業利益22.5%減、税引前利益29.9%減、四半期利益36.5%減、最終四半期利益37.6%減の減収、2ケタ減益。最終利益の2017年3月期の通期業績見通しに対する進捗率は22.7%だった。売上は衝突回避システムやエアコンなどが好調で底堅かったものの、減益幅が大きい。為替の円高が280億円の営業減益要因になっているほか、自動車の安全性の研究などに積極投資している研究開発費の増加も採算を悪化させている。

 アイシン精機<7259>は今期から国際会計基準(IFRS)を任意適用している。売上収益8.8%増、営業利益77.9%増、税引前利益37.9%増、四半期利益73.5%増、最終四半期純利益92.8%増の増収、2ケタ増益。最終利益の2017年3月期の通期業績見通しに対する進捗率は46.4%と高かった。熊本地震で子会社アイシン九州の工場が被災し、トヨタの完成車ベースで約8万台の生産に支障が出たという。その代替生産のコスト負担が第1四半期で約95億円の減益要因になったが、主力の自動変速機(AT)の生産が中国やヨーロッパでは好調が続いており、地震や円高の影響を吸収して増収増益になった。

 豊田自動織機<6201>は売上高2.6%減、営業利益8.4%減、経常利益13.4%減、四半期純利益11.1%減の減収、2ケタ減益。最終利益の2017年3月期の通期業績見通しに対する進捗率は34.3%と高い。エアコン部品、フォークリフトは北米、ヨーロッパを中心に販売個数ベースでは好調だったが、円高で円ベースの売上が目減りして減収。トヨタ向けのエンジン供給、車体組立は伸びている。6月、インドでトヨタのインド法人向けのディーゼルエンジン生産を開始した。

 トヨタ紡織<3116>は売上高2.7%減、営業利益28.0%増、経常利益21.8%増、四半期純利益6.7%減で減収、営業・経常増益、最終減益という決算内容。最終利益の2017年3月期の通期業績見通しに対する進捗率は28.0%。北米向けのシートは好調だが為替の円高で円ベースの減収は避けられなかった。営業・最終増益は、昨年11月にアイシン精機、シロキ工業から事業譲渡を受け、トヨタグループ内のシート部品の生産がほぼ1社に集約された効果があらわれた。

 ジェイテクト<6473>は売上高7.3%減、営業利益6.8%減、経常利益24.8%減、四半期純利益23.6%減の減収、2ケタ最終減益。最終利益の2017年3月期の通期業績見通しに対する進捗率は30.5%。北米やヨーロッパでは自動車販売台数が堅調でステアリングの供給も伸びているが、円高で円建てでは減収を余儀なくされている。中国など新興国では不振に陥っている。

 日本精工(NSK)<6471>は今期から国際会計基準(IFRS)を任意適用しているが、売上高7.7%減、営業利益44.9%減、税引前四半期利益44.6%減、四半期利益30.6%減、最終四半期利益32.4%減の減収、2ケタ減益と悪かった。最終利益の2017年3月期の通期業績見通しに対する進捗率は29.0%。自動車部品事業は海外で自動車用ベアリングも電動パワステも好調だったが、円高で円ベースの売上が3%の減収で、営業利益も目減りした。為替の円高は41億円の営業減益要因。産業機械用のベアリングは中国でスマホ生産が落ち込むなど新興国でふるわず18%の減収、52%の営業減益。ヨーロッパで価格カルテルに関して集団訴訟(クラスアクション)を起こされ、一部和解したが、その訴訟関連費用もコストを押し上げた。

 カルソニックカンセイ<7248>は売上高6.1%減、営業利益6.5%増、経常利益2.4%減、四半期純利益2.0%増の減収、最終増益決算。最終利益の2017年3月期の通期業績見通しに対する進捗率は23.2%。主要取引先の日産<7201>の北米での自動車販売は依然好調で、ラジエーター、コンプレッサー、電装品など部品供給の水準は落ちていない。減収の要因は為替の円高で、営業増益の要因はコスト削減活動の成果、最終増益の要因は法人税の負担が2.3億円減少するという税務上の理由と説明している。