8月1日、三大メガバンクの2016年4~6月期(第1四半期)決算が出揃った。
四半期純利益は三菱UFJが32.0%減、みずほが16.0%減、三井住友FGが31.2%と揃って前年同期から悪化している。傘下銀行の本業のもうけを示す実質業務純益はみずほは4%増だが、三菱UFJは21%減、三井住友FGは31%減だった。
「預金と貸付の金利差(預貸利ざや)で収益をあげる」という銀行本来の収益モデルは、今年から始まった日銀のマイナス金利政策でキリキリ絞りあげられている。7月の追加金融緩和でマイナス金利の深掘りが回避されたことが、せめてものなぐさみ。以前は海外での貸付や新興国などの海外事業で得た収益で国内の不振を補うこともできたが、前年同期と比べるとドル円で平均13円も為替の円高が進行したため、決算で円に換算すると海外収益が目減りしてしまうのが痛い。
また、国内株式市場がふるわないために保有有価証券の評価損益が減少し、持ち合い株式の解消を進めようとしても株式売却益が思うように得られず、傘下の証券会社の株式売買手数料収入も、銀行や傘下の証券会社の投資信託の販売手数料収入もみんな減ってしまうというスパイラルに陥っている。良かったのは、金利の低下でその価格が上昇した債券売買益ぐらいだった。
今期の業績は、三菱UFJ、みずほは2ケタの最終減益、三井住友FGは最終増益の見通しを修正していないが、メガバンクにとって厳しい状況はこの先も続きそうだ。
株安は株式売買益にも手数料収入にも悪影響を及ぼす
2016年4~6月期の業績は、三菱UFJ<8306>は経常収益10.9%減、経常利益29.7%減、四半期純利益32.0%減の2ケタ減収減益。最終利益の2017年3月期の通期業績見通しに対する進捗率は22.2%だった。三菱東京UFJ銀行、三菱UFJ信託銀行2行合算の実質業務純益は21%減の2580億円。日銀のマイナス金利政策の影響で貸出金利が低下し、本業の預貸利ざやが縮小し資金利益が悪化。海外事業の収益は為替の円高のために前年同期に比べ円ベースで目減りしている。
みずほ<8411>は経常収益2.0%減、経常利益27.2%減、四半期純利益16.0%減の減収減益。最終利益の2017年3月期の通期業績見通しに対する進捗率は22.1%だった。みずほ銀行、みずほ信託銀行2行合算の実質業務純益は4%増の1616億円。日銀のマイナス金利政策の影響で貸出金利が低下し、預金金利との預貸利ざやが縮小して資金利益が悪化した。株式の持ち合い解消を進めているが、株式市場の低迷で株式やETF(上場投資信託)の関連収益も悪化した。市場金利の低下で債券価格が上昇したため国債など債券の売買益が増加し、手数料収入も若干増えたが、2ケタの減益は避けられなかった。
三井住友FG<8316>は経常収益4.9%減、経常利益32.3%減、四半期純利益31.2%減の減収減益。最終利益の2017年3月期の通期業績見通しに対する進捗率は26.3%だった。三井住友銀行単体の実質業務純益は31%減の1648億円。日銀のマイナス金利政策の影響で預貸金利差は1.12%で、前年同期から0.09ポイント縮小し資金利益が減少している。金利の低下に伴って債券価格が上昇し債券の売買益は増加したものの焼け石に水。株式市場の低迷で持ち合い解消の株式売却は進まず、銀行での個人向けの投資信託の販売も、傘下の証券会社での株式売買も落ち込み、手数料収入が減っている。
2017年3月期の業績見通しは、三菱UFJは当期純利益の目標は10.6%減の8500億円の2ケタ最終減益で、予想年間配当18円ともども修正なし。
みずほは当期純利益10.5%減の最終2ケタ減益見通し、予想年間配当7.5円とも修正なし。日銀のマイナス金利導入に伴う影響を400億円程度と見積もっている。
三井住友FGは経常利益3.5%増、当期純利益8.2%増の最終増益見通し、予想年間配当150円とも修正なし。増益の根拠は前期の海外での減損処理、消費者金融子会社の過払金引当金の積み増しの影響が消えることと、持ち合い株の売却益が見込めること。ただし株式売買益は今後、市況がどの程度回復するかで変わってくる可能性がある。(編集担当:寺尾淳)