IT専門調査会社 IDC Japanは、国内Software-Defined Storage(SDS)の需要動向分析結果を発表した。
調査は、国内SDS市場の需要動向をユーザー調査に基づいて分析している。この調査では、SDSに対する認知度、将来の利用意向、選択の条件、期待するメリットなどの設問を通して今後の需要を予測するとともに、市場開拓に必要な留意点についての分析を行った。
IDCでは、Software-Defined Storage(SDS)を「容易に入手可能な(カスタマイズされていない)コンポーネントによって構成されたコモディティハードウェアを前提とし、その上に搭載されたソフトウェアスタックによってストレージ機能のフルセットを提供するプラットフォーム」であると定義している。
今回、2016年の調査では、「利用中/計画中」と「利用しないと決めている」という方針をすでに決めているユーザーが多くなり、「検討中」とするユーザーが前回2015年調査と比較して少なくなったという。これはSDSに関する理解が進み、自社に適した製品なのかどうかという判断ができるようになったユーザー企業が増えたことを表しているとしている。ただし、全体の2割以上は、依然として「わからない」とする回答であり、SDSに対する知識や関心が低いユーザーも多く残っていることも判明した。
SDSの導入理由についての質問では、コスト削減と回答したユーザーが多数を占める結果となった。コモディティサーバーを用いてストレージインフラを構築できることは、調達コストを削減すると考えられる上、保守料金も抑えることが可能であり、運用コスト削減にも寄与すると期待されている。一方、「上位の管理ソフトウェアで制御できる」については回答率が低い傾向にあり、運用の自動化、プロビジョニングの迅速化といったSDSのメリットについては、まだ評価するユーザーの割合が低いことを示しているとしている。
これらの回答傾向から今後のSDS市場の動向を予測すると、SDS導入の利点はデータ保有量の多い大企業においてより高く認識されており、導入の判断もコスト削減を達成できるか否かを基準にする傾向が強いことから、SDSの導入効果が発揮されやすい大企業を中心に国内市場の発展が進むと見込まれるとしている。
IDC Japan エンタープライズインフラストラクチャ リサーチマネージャーの鈴木康介氏は「ITインフラストラクチャの運用自動化を進める必要性に対する国内ユーザーのコンセンサスは徐々に形成されつつあり、Software-Defined Infrastructure、Software-Defined Datacenterなどの言葉で表される『ソフトウェアによって制御される高度に効率化または自動化された柔軟なITインフラストラクチャの運用環境』はエンタープライズITインフラ発展の方向性として徐々に認知されてきている。国内市場においてはSDS市場の形成が緩慢である一方、グローバル市場ではポジションを確立しつつあるため、今後、外資系ベンダーのSDS製品が国内市場にも浸透していく見通しが高い」と分析している。(編集担当:慶尾六郎)