東京商工リサーチによると、112行の2016年3月期の貸出金のうち、地方公共団体(地公体)向け貸出残高が28兆3,708億円(前年同期比3.3%増)と、6年連続で増加したことがわかった。
小企業等向け貸出残高は292兆8,891億円(同2.7%増)で、2012年3月期以降、5年連続で増加した。112行のうち、102行(構成比91.0%)が貸出を伸ばした。
12行の2016年3月期の総貸出金残高は429兆6,266億円で、地公体向け貸出は全体の6.60%(前年同期比0.05ポイント増)、中小企業等向け貸出は同68.17%(同0.14ポイント増)と、それぞれ前年同期を上回った。地公体向け貸出の構成比は、3月期では調査以来、最大となった。
融機関は不動産、福祉・医療が牽引する形で中小企業向け貸出を伸ばしている。だが、2016年3月期の地公体向け貸出の伸び率は中小企業等向けを上回っている。企業の資金需要を喚起できない状況で、より倒産リスクの低い地公体に貸出金が向いている構図が浮き彫りとなったとしている
行112行の2016年3月期の地公体向け貸出金残高は28兆3,708億円で、前年同期(27兆4,442億円)より3.3%(9,266億円)増加した。112行のうち、地公体向け貸出が前年同期を上回ったのは71行(構成比63.3%)だった。内訳は大手2行、地銀41行、第二地銀28銀行。前年同期は79行(同70.5%、大手行2行、地銀50行、第二地銀27行)で、8行減少した。
貸出金残高に占める地公体向けの貸出比率は6.60%で、前年同期比0.05ポイント上昇した。調査を開始した2010年3月期以降、3月期では6年連続で前年同期を上回り、貸出比率は最高を記録した。
12行のうち、地公体向け貸出比率が前年同期を上回ったのは57行(構成比50.8%)で、前年同期(53行)より4行増加した。
公体向け貸出比率のトップは、青森銀行の34.1%(前年同期34.5%)で、2年連続でトップとなった。次いで、北都銀行32.1%(同33.9%)、北洋銀行25.1%(同24.0%)、岩手銀行23.8%(同23.5%)、福島銀行23.3%(同18.1%)の順。
公体向け貸出比率上位10行のうち、6行で前年同期より貸出比率が上昇した。また、上位10行のうち、6位の鳥取銀行を除き、9行が東北、北海道だった(前年同期8行)。域内企業の資金需要を喚起できず資金運用先が地公体向け貸出に向かっている可能性もあるとしている
2016年2月、日本銀行がマイナス金利を導入以降、銀行間の低金利競争は熾烈さを増している。今回の調査で貸出金の伸び率は地公体向けが中小企業向けを上回り、中小企業の資金需要の低迷と貸倒リスクを避ける銀行の姿勢も鮮明になった。また、中小企業等向け貸出は、医療・介護と不動産業が突出し、卸売業は減少に転じており業種間での二極化も広がっているという。
地方銀行は地公体向け、中小企業等向けともに前年同期を上回り、第二地銀は地公体向け貸出比率が前年同期を上回ったが、中小企業等向けは前年同期を下回った。これは低金利下での金融機関の借換え競争によるものか検証することが必要かもしれないとしている。(編集担当:慶尾六郎)