金融庁は、銀行法を改正することにより銀行の営業時間を実質自由化することを発表した。特に過疎地域店舗での営業時間短縮がかなうこととなれば、店舗の統廃合をまぬがれるという可能性が高い。この施策が利用者にとってのメリットを増やすのか動向が注目される。
現在の銀行は、銀行法により、午前9時から午後3時までは必ず営業しないといけないということが定められている。この時間を営業していることを条件に、状況に応じて営業時間の延長は現行でも行ってよいことになっているが、大半の銀行の営業時間は午前9時から午後3時までとなっている。このことに関しては、営業時間の延長や土日の営業をのぞむ声が多い。
また、営業時間の短縮に関しては、立地など特殊な事情があることと当座預金を扱っていないことが条件となっていた。しかし今回、金融庁は、当座預金を扱っていても、営業時間を自由に変更することを可能にすると発表した。つまり、全ての銀行に関して、午前9時から午後3時に営業していない時間帯があっても法律上は問題がなくなる。
今回の改正は、過疎地域の店舗を抱えている地方銀行が金融庁に要望していたことだ。地方銀行は、営業時間を短縮することで、人員の配置などを見直し、店舗の統廃合を防ぐという青写真を描いている。過疎地域以外でも、銀行の戦略的な店舗運営が加速することが考えられる。例えば夜間に利用が多いと見込まれる店舗の場合は営業開始時間を遅らせて夜間に営業するということも可能になるだろう。
午前9時から午後3時まで営業してさえいれば、銀行が営業時間を延長することは現行の法律でも可能だ。例えば、りそな銀行などは平日午後5時まで窓口が開いている。したがって、今回の銀行法の改正は、過疎地店舗の営業時間短縮を特に視野に入れてのものだ。
銀行の戦略的店舗運営を可能にするには、銀行内部で人員体制を整えるなどの準備が必要だ。その前提がなければ、銀行のサービスの質を落としてしまうことにもなりかねない。そのしわよせが手数料の値上げなど利用者にのしかかるのであれば本末転倒である。しかし、過疎地域の店舗が営業時間を短縮することで統廃合を免れるのなら、この施策は地方にとって朗報になるだろう。
コンビニのATMやネット銀行などが台頭するなかで、銀行の店舗運営は見直しをせまられている。今回の改正が利用者にとってメリットが大きいものになるよう願ってやまない。(編集担当:久保田雄城)