全国70の刑務所のうち、65歳以上の高齢者が20%以上を占める刑務所は32ある。そこに2017年より介護スタッフを配置する方針を固めたことを政府が発表した。高齢化する刑務所への対策の一環だが、高齢受刑者の再犯率を高めるのではないかという反対意見も出ている。
今全国の刑務所の高齢化が甚だしいことはもはや有名な事実となっている。刑務所に入る全体数は2006年をピークとして減っているが、60歳以上の受刑者は14年で全体の18.4%と、02年の10%超えと比べても大幅に増えている。高齢化した受刑者達の介護は若い受刑者や刑務官が行っており、通常業務に支障が出ているという。そこで政府は、介護スタッフを全国32の刑務所に配置することを決めた。
全国には刑務所が70あるが、そのうち65歳以上の高齢者が20%を超える刑務所は32ある。そこに17年から1名ずつ介護スタッフが配置される。介護福祉士の資格を持っていなくても、一定の研修を修了していればスタッフとして働くことができるとのこと。非常勤スタッフとして雇われる彼らの存在には賛否両論が出ている。
今までも高齢化がすすむ刑務所では、バリアフリー化がされたりベッド付きの個室に建て替えられたりしていた。また、食事は療養食や刻み食など特定のニーズに対応したものも作られている。これらの対策に加え、今回介護スタッフの配置が決められた。賛成する意見がある一方、反対する意見としては、再犯率が高まるのではないかというものがある。つまり、刑務所に入っていた方が三食困らずに食べられることに加え医療や介護も受けられるとなれば、一般社会にいるよりも居心地がよいと思う受刑者が増えるのではないかという意見があるのだ。
高齢の受刑者はただでさえ何度も刑務所に入ることを繰り返してしまう人が多い。特に窃盗が多く、全体の約7割、高齢女性では検挙数の約9割が窃盗だとも言われている。そして再犯を繰り返してしまう背景には、高齢者の経済的困窮や孤独がある。社会に経済的格差や孤独が蔓延すると同時に起こっている問題が刑務所の高齢化問題だといえるかもしれない。再犯率を防ぐためにも、高齢者が身の置き場を確保できるような福祉政策を進めることがのぞまれている。(編集担当:久保田雄城)