東京商工リサーチによると、2016年1-8月の「老人福祉・介護事業」の倒産は62件に達したという。介護保険法が施行された2000年以降では、年次集計で過去最多を記録した前年(76件)を上回るハイペースで推移している。構成比では、設立から5年以内が46.7%、負債5千万円未満の小・零細規模が70.9%を占め、倒産原因では販売不振が67.7%を占める。安易な起業だけでなく、本業不振による異業種からの参入組やFC加盟社など、小・零細規模で業績不振に直面したケースが多いのが特徴であるとしている。業界の大きな課題に浮上している介護職員の人手不足が解消されない中、老人福祉・介護業界はここにきて淘汰の波が押し寄せているという。
企業倒産が低水準で推移するなか、2016年1-8月の老人福祉・介護事業の倒産は62件(前年同期比12.7%増、前年同期55件)に達し、年次集計では過去最多ペースで推移している。負債総額も69億9,700万円(同45.0%増、同48億2,300万円)と前年同期を上回った。負債10億円以上が2件(前年同期ゼロ)発生し大型化の兆しがうかがえる反面、負債5千万円未満も44件(前年同期比18.9%増、前年同期37件、構成比70.9%)と増え、倒産は広がりを見せている。
2016年1-8月の老人福祉・介護事業倒産の内訳では、施設系のデイサービスセンターを含む「通所・短期入所介護事業」が最多の28件(前年同期比21.7%増、前年同期23件)発生した。また、「訪問介護事業」も25件(同19.0%増、同21件)と前年同期を上回り、有料老人ホームは4件(前年同期2件)発生した。
原因別の最多は販売不振の42件(前年同期比82.6%増、前年同期23件)だった。次いで、事業上の失敗が7件、設備投資過大が4件、既往のシワ寄せ(赤字累積)が3件の順。販売不振が全体の約7割(構成比67.7%)を占めた。安易な起業だけでなく本業不振のため異業種からの参入(4件)やFC加盟(3件)など、事業計画が甘い小・零細規模の業者が目論見通りの業績を上げられず経営に行き詰ったケースが多いとしている。
地区別では、全国9地区で倒産が発生した。関東の23件(前年同期14件)を筆頭に、近畿12件(同16件)、九州9件(同8件)、東北6件(同2件)、中部6件(同7件)、中国3件(同ゼロ)、北海道1件(同4件)、四国1件(同3件)、北陸1件(同1件)の順。前年同期より上回ったのは、東北・関東・中国・九州の4地区。減少は北海道・中部・近畿・四国の4地区、北陸が前年同期同数だった。関東が大幅に増えるなど、地区間で“まだら模様”をみせているが、同業他社との競争も影響しているとみられるとしている。
高齢者の増加で介護分野は今後も市場拡大が見込まれるが、地区別で経営環境は異なっていても一様に厳しさは増しており、事業基盤の脆い事業者を中心に選別の時期を迎えているとしている。(編集担当:慶尾六郎)