NHKの会長選び 本格化

2016年10月15日 09:47

画・進むテレビのネット配信 NHKの来春ネット同時配信に民放テレビ局はどう動く?

NHKの籾井勝人氏会長の任期が来年1月満了するのに伴う「次期会長選び」が本格化しつつある。

 NHKの籾井勝人氏会長の任期が来年1月満了するのに伴う「次期会長選び」が本格化しつつある。

 次期会長に誰を指名するのか。国民の関心は高い。NHKに対する「政治的中立性」への信頼、他の民放のように広告スポンサーや広告代理店からの無言の圧力もない。NHKゆえに鋭く切り込める「政治問題」「社会問題」に、国民目線で追及できる本来の機能強化へ、報道部門の職員らが報道陣としての姿勢を貫ける社風を構築できるリーダー(会長)を据えなければならない。

 その点で、籾井会長は就任会見から「政府が右と言えば左と言うわけにはいかない」など政府の広報機関と思っているのか、基本部分で「政治的中立性」を損なう認識を露わにした。少なくとも、公共放送としてのNHK独自の視点で政府の言動、政策、与野党の動向、政策を分析し、伝えることが基本だ。そうした視点を備えた人物を期待したい。

 NHKの最高意思決定機関「経営委員会」は次期会長指名要件を決めている。(1)公共放送の使命を十分に理解していること(2)政治的に中立であること(3)高潔で、説明力に優れていること(4)リーダーシップ、業務遂行能力があること(5)社会変化に対応できる経営センスがあること。

 この指名要件をすべて満たす会長なら、政府が右と言えば左と言うわけにはいかないという発言はないだろう。報道機関のトップがこのような発言をすれば、NHKに限らず、民放でも、政治報道への信頼は『ゼロ』になる。政府広報に過ぎないからだ。

 安保法制、原発再稼働、原発運転原則40年ルールの形骸化の危機、南スーダンPKO活動の実態と南スーダン治安状況はNHKがルポし、特番放送してほしい内容だ。

 あわせて民主党政権から自民党政権に代わったため全く議論されなくなった「官房機密費」の情報開示の在り方についても切り込むことを期待したい。

 民主党政権時の藤村修官房長官は解散総選挙直前の会見で、官房機密費について「報償費の機能維持と透明性確保の両立は大変難しい課題だ。総理官邸分の内閣官房報償費については、支払い相手の名前、名称、支払い目的など具体的な支出に関わる情報は極めて秘匿性の高い機微な情報であるため、将来の活動にも支障をきたすおそれがあり、一定期間後であっても公開には適さない」と語った。

 しかし「会計手続き上の支払い決定月日や支払額についてはさまざまな憶測を呼ぶデメリットはあるものの、透明性確保の要請を踏まえれば一定期間後は整理のうえ、公開することは可能ではないか」と検討の余地を示し「官房長官の決定で会計手続き上の支払い決定の月日や支払額を取りまとめた文書を、一定期間の経過後に公開することとしてはどうか」と私案を示した。

 官房機密費のうち「情報調査費」と「活動費」は目的・支払先・金額が明記されたものが確実に保管されているそうだが、「政策推進費」については完全に残されているかどうかに疑問符がついているという。

 官房機密費の情報公開については係争中のものもあり、最高裁まで行きそうだが、司法判断とは別に、報道機関としての切り込みが期待される。

 この件は別途コラムで触れるべきだったが、色んな情報機関がある中、公共放送としてのNHKの存在意義や最も役割を果たすべきは政治・社会問題に切り込む役割だということを強調したい。それを牽引できるリーダーが会長に指名されることを望む。(編集担当:森高龍二)