今週の振り返り アップダウン激しく2勝3敗で結局下落の週

2013年02月09日 08:02

0205_004

空前の大商い銘柄あり、400円超の上昇ありで、エキセントリックな1週間

 空前の大商い銘柄あり、400円超の上昇ありで、エキセントリックな1週間

  4日朝方の為替レートはドル円が92円台後半、ユーロ円が126円台後半で、円安進行のペースは衰えない。NYダウ終値は149ドル上昇し14000ドル台に乗せた。日経平均は62.82円高の11254.16円で始まり、終日、高値もみあいでおおむね11200円台を維持した。終値は69.01円高の11260.35円で5日続伸。300銘柄が昨年来高値をつけ、値上がり銘柄は1000をオーバーしTOPIX終値は950を超えた。売買高は44億株、売買代金は2兆3399億円。値上がり業種は鉄鋼、繊維、銀行、証券、保険、電機、自動車など。値下がり業種は金属製品、鉱業、電力・ガス、建設、サービス、医薬品、小売、食品など。

 鉄鋼ではJFE<5411>が227円の大幅高で8日続伸し、新日鐵住金<5401>も19円高。三大メガバンクも好調で、野村HD<8604>は11円高。自動車は三菱自<7211>が値上がり率4位の大幅高で売買高2位と買われた。トヨタ<7203>は3ケタ高で、マツダ<7261>も商いを伴って続伸した。

 シャープ<6753>は18円高だが、ソニー<6758>は3ケタの102円高で、前週末に第3四半期最終黒字の決算発表を行ったパナソニック<6752>は長時間ストップ高に張り付く人気で100円高、値上がり率8位。NEC<6701>が売買を伴って上昇し、富士通<6702>も株価を上げた。

 日経新聞朝刊で、慶応義塾大学の小池康博教授らがテレビなどの液晶ディスプレーに組み込むだけで有機ELを超える画質を実現できるフィルムを開発したニュースが報じられ、開発に関与し量産化を目指す東洋紡<3101>に買いが集まった。値上がり率1位、売買高5位、売買代金12位。

 金、ニッケルの価格上昇を好感して住友金属鉱山<5713>が79円高と買われ、決算が良かったキーエンス<6861>は750円、大塚商会<4768>は570円の大幅高。東京海上HD<8766>は126円の3ケタ高。オリンパス<7733>は94円上昇している。一方、ガラス業界のセントラル硝子<4044>、日本板硝子<5202>や決算が悪かったNTTデータ<9613>、エーザイ<4523>は大きく下げ、キヤノン<7751>は3日続落し、コマツ<6301>も売られた。建設の大手ゼネコン、不動産大手も軟調だった。

 取引時間中に決算発表を行った銘柄では、IHI<7013>は決算内容が良く上昇。三井物産<8031>は減収減益で減配も発表しながら15円高。住友商事<8053>も減収減益で減配の予定と発表した直後に株価が大きく下げたが、すぐ持ち直して7円高で終えた。

 前場に尖閣諸島周辺の領海に中国の監視船が侵入したというニュースが流れ、防衛関連銘柄が買われた。小銃や迫撃砲を作っている豊和工業<6203>が値上がり率3位、海上封鎖用の機雷を作っている石川製作所<6208>が同5位に入っている。

 5日朝方のユーロ円は124円台半ば。スペインのラホイ首相周辺に不正資金疑惑が浮上し、イタリアでは総選挙を前にベルルスコーニ前首相の勢力の支持率が急上昇。両国の国債利回りは上昇してユーロは急落した。前日93円台にタッチしたドル円は92円台前半に踏みとどまったが、NYダウは129ドル安と大きく下落した。日経平均は155.11円安の11105.24円で始まり、前場はおおむね11100円台前半、後場は11000円を割り込む水準で一進一退で推移した。終値は213.43円安の11046.92円で、安値引けで6日ぶりの反落。売買高は48億株、売買代金は2兆5468億円で前日の記録を更新した。

 業種別の値上がりセクターは空運、ガラス・土石、水産、食品、化学、小売など内需系が多く、値下がりセクターは不動産、保険、倉庫、金属製品、非鉄、鉄鋼などだった。業種別騰落率トップの空運株は、JAL<9201>が前日、通期の営業利益を上方修正する決算と、年間180円の復配を発表し195円高。再上場来高値を更新した。2位のガラス・土石は前日下げた日本板硝子<5202>が投資判断引き上げで一転、買いを集めて売買高4位になり、18円高で値上がり率2位に入った。同業の旭硝子<5201>も24円高で続伸した。

 パナソニック<6752>は、安く始まったところに押し目買いが入り前日に引き続き朝から大商い。その後はマイナスまで沈む荒い値動きだったが、終値は27円高の719円。売買高は3億株を超えてみずほ<8411>に次ぐ2位で、売買代金は1位。ソニー<6758>は10円安、シャープ<6753>は12円安。日経新聞が今期最終赤字1000億円規模と報じた富士通<6702>は15円安、業績見通しを下方修正した日立<6501>は36円安と売られた。エーザイ<4523>、アルプス電気<6770>は買い戻され、後場に自社株買いを発表したニチレイ<2871>は直後に急騰した。

 1月の既存店売上が不振だったファーストリテイリング<9983>は790円安と売られ、75円安のソフトバンク<9984>とともに日経平均を40円引き下げた。トヨタ<7203>は55円安。不動産株に利益確定売りが入り業種別騰落率でワーストになった。大手の三井不動産<8801>、三菱地所<8802>、住友不動産<8830>は揃って3ケタ安。三大メガバンクも野村HD<8604>も揃って下落。前日に上がった防衛関連株も売られ、豊和工業<6203>は値下がり率8位、石川製作所<6208>は同9位になった。

 6日朝方の為替レートはドル円は93円台後半、ユーロ円は127円前半まで円安が大きく進展。NYダウは99ドル高。日経平均は189.78円高の11236.70円で始まったが、15分ほどで11300円台に乗せる。後場は先物主導で上値をどんどん切り上げる展開で、午後1時台には10400円台に乗せ、2時台にはドル円が一時94円台にタッチしたこともあり11500円にあと2円まで迫ったが、大引け前に利益確定売りが入り終値は416.83円高の11463.75円。2010年4月のリーマンショック後高値の終値11339円、ザラ場11408円を一気に抜く大幅上昇になった。TOPIX終値は+29.12の968.82。売買代金は2兆8191億円で3日連続で記録を更新した。

 大幅高で業種別騰落率は全業種プラス。上位は海運、輸送用機器、ゴム、倉庫、機械、不動産、鉄鋼などで、下位は空運、小売、水産、陸運、電力・ガスなどだった。

 970円高のファーストリテイリング<9983>、360円高のファナック<6954>、135円高のソフトバンク<9984>、390円高の京セラ<6971>の4銘柄で日経平均を85円も引き上げた。急速な円安を好感して輸出関連、特に自動車株は好調。前日に決算発表を行い、通期業績見通しが単独営業黒字に転換し、連結は上方修正が並んだトヨタ<7203>は、昨年来高値を更新して275円の大幅高で売買代金1位。デンソー<6902>、アイシン精機<7259>、豊田合成<7282>も3ケタ高。午後1時に決算発表を行った富士重工<7270>は通期純利益を過去最高益に上方修正し67円高。ホンダ<7267>は115円高、日産<7201>は41円高、マツダ<7261>は12円高だったが、三菱自動車<7211>は3円安でカヤの外だった。

 パナソニック<6752>は20円高でも売買高は4位で売買代金は2位。ソニー<6758>は34円高。東芝<6502>は22円高、三菱電機<6503>は42円高。富士通<6702>も上昇。川崎汽船<9107>など海運株が買いを集め、前日不振の不動産も買い戻された。

 三菱重工<7011>は午後1時30分に決算発表を行った直後に77円高までぐんぐん上昇。終値は50円高で値上がり率12位に入り、売買高6位、売買代金5位に入った。通期純利益を200億円上方修正している。通期の純利益が過去最高を更新する見通しを出し、増配と自社株買いの実施を発表した花王<4452>は201円高。石油元売りのJXHD<5020>は18円高、出光<5019>は60円高で、ともに経常利益見通しを上方修正。ローソン<2651>は6連騰。通期の純利益を88%減に下方修正した東京エレクトロン<8035>は、後場に買い戻されて終値は30円高。一方、大日本スクリーン<7735>、東洋紡<3101>は株価を下げた。

 中国海軍が海上自衛隊の護衛艦やヘリに射撃用レーダーを照射したとわかり、防衛関連銘柄が買われた。豊和工業<6203>、石川製作所<6208>は値上がり率でそれぞれ5位、6位。関連会社が自衛隊艦艇の建造で実績を持つIHI<7013>は14円高と買われ、新護衛艦を建造中の三井造船<7003>も18円高で値上がり率10位。東京計器<7721>、日本アビオニクス<6946>は株価上昇率が5%を超えた。

 7日朝方の為替レートはドル円が93円台半ば、ユーロ円が126円台半ばで円安の勢いも一服。NYダウは7ドル高。日経平均は57.43円安の11406.32円で始まり、午前10時台以降はおおむね11300円台で推移した。終値は106.68円安の11357.07円で、上昇相場も少し踊り場。TOPIXは+0.36の969.18で続伸した。利益確定売りで日経平均が下落する一方、時価総額の大きい銀行株など大型株から中・小型株まで幅広く買われTOPIXを下支えした。売買高は51億株、売買代金は2兆7716億円。

 海運、不動産、証券、紙パルプ、自動車、陸運、建設などの業種が買われ、精密、機械、保険、食品などの業種が売られた。

 大商いだったのがマツダ<7261>で、売買高は7億株、売買代金は2170億円で、どちらも1位。値上がり率でも34円高で11位に入った。個人投資家の低位株人気に加えて最終黒字を260億円に上方修正した前日の決算内容が良かったため。自動車株はアジアでトラック販売が好調で6年ぶりの最高益になる模様と報じられたいすゞ<7002>が5円高で富士重工<7270>も続伸した。

 ソニー<6758>は38円高と上昇し売買高8位、売買代金3位に入った。パナソニック<6752>は18円高。シャープ<6753>は1円安。JAL<9201>やJR3社、京成<9009>など運輸関係が好調で、後場に相次いで決算を発表した清水建設<1803>が13円高、鹿島<1812>が14円高、大成建設<1801>が13円高と市場の反応は良かった。純利益69%増の三井不動産<8801>は61円高、営業利益14%増、経常利益25%増の古河電工<5801>は19円高。主力の石巻工場が震災から完全復旧し最終黒字74億円になった日本製紙<3893>は177円の大幅高で値上がり率8位に入っている。NTT<9432>が営業利益2%減にもかかわらず140円高と買われたのに対し、クボタ<6326>は純利益10%増で通期業績見通しを上方修正したにもかかわらず、42円安と反落した。

 日経新聞朝刊でアメリカ産の輸入が3月にも解禁になると報じられた「シェールガス」関連銘柄も、明星工業<1976>、石井鐵工所<6362>、トーヨーカネツ<6369>、大陽日酸<4091>、丸一鋼管<5463>などが買われた。

 一方、デジタルカメラで苦戦し、通期の純利益を下方修正したニコン<7731>は一時ストップ安の500円安で値下がり率1位。決算内容が悪かったヤマハ<7951>が160円安で値下がり率2位になった。キヤノン<7751>、ファーストリテイリング<9983>、ソフトバンク<9984>は大幅安だった。

 8日朝方の為替レートはドル円は93円台後半、ユーロが下落しユーロ円は125円台半ば。NYダウは42ドル安。日経平均は177.10円安の11179.97円で始まった。マイナーSQ算出日でSQ推計値は11151.92円と低かった。前場は押し目買いで11300円台直前まで上げても、再び低迷し11200円を割り込む。大引け前にはずるずると下げ続け203.91円安の11153.16円で今週の取引を終えた。日経平均の週間連続上昇は12週でストップした。TOPIXは-11.83の957.35でこちらは13週連続上昇記録更新中。商いは42億株、2兆7000万円で勢いは衰えない。

 業種別騰落率でプラスだったのは空運と非鉄金属の2業種だけ。空運はJAL<9201>が200円高で連日の再上場来高値更新。全日空<9202>は9円高で売買高7位に入った。マイナス幅が大きかったのはガラス・土石、海運、パルプ・紙、鉱業、電気機器などだった。

 自動車株で良かったのはトヨタ<7203>で80円高。売買代金3位。マツダ<7261>はこの日も売買高、売買代金でトップだったが株価は11円安。売買代金の2位に入ったソニー<6758>は、前日の決算発表が失望を買い154円安で下落幅は10%を超え値下がり率4位。DENA<2432>は決算内容が良くても朝方のプラスから196円安と急落した。7期ぶりの営業減益の決算を発表した日本マクドナルドHD<2702>は47円安。三大メガバンクが揃って下落し、ニコン<7731>も続落した。10月をメドに合併すると発表した日鐵商事<9810>は9円高で、住金物産<9938>は18円安。親会社の新日鉄住金<5401>は2円安だった。

 住友金属鉱山<5713>が決算だけでなく中期経営計画も好感されて107円高。決算で業績改善のミツミ電機<6767>は54円高で値上がり率7位。ヤマダ電機<9831>、三井不動産<8801>、NTT<9432>、日揮<1963>などが上昇。証券は野村HD<8604>は売買高3位、売買代金5位に入りながら2円安だったが、光世証券<8617>が値上がり率ランキング9位、マネックスG<8698>が同10位に入った。

 富士通<6702>の前日の決算発表では、通期の950億円の最終赤字と無配見通し、システムLSI事業のパナソニックとの統合とともに、9500人を削減するリストラ策を発表。それをめぐって投資家の思惑が交錯し、33円高まで上昇しながら3円安まで急落する展開を見せたが結局、21円高で引けた。

来週の展望 台頭する個人投資家が株式市場を変えるか

 来週は11日の月曜日が建国記念の日で祝日休場になり、取引は4日間。13~14日は日銀の金融政策決定会合が開催される。追加金融緩和は見送られる見通しだが、景気判断は上方修正されるだろうか。今後の焦点は、副総裁の任期に合わせて3月19日の辞任を発表した白川方明総裁の後任人事と、それが国会で同意を得られるかという問題に移る。為替市場は次期総裁に大胆な金融緩和を行う人物の起用を織り込み円安が進行している。

 主要企業の4~12月期決算発表は峠を越し、めぼしいところでは建設業の残りと新日鉄住金、問題を起こしたオリンパスと大王製紙、ビール大手のアサヒ、キリンや人気株のアイフル程度だろう。

 <主要企業の決算発表予定>12日 大林組<1802>・熊谷組<1861>・五洋建設<1893>・不二家<2211>・王子HD<3861>・大王製紙<3880>・三菱マテリアル<5711>・ダイキン<6367>・パイオニア<6773>・オリンパス<7733>、13日 飛島建設<1805>・日揮<1963>・アサヒGHD<2502>・アイフル<8515>・東京海上HD<8766>・第一生命<8750>、14日 長谷工<1808>・山崎製パン<2212>・キリンHD<2503>・マツモトキヨシHD<3088>・楽天<4755>・新日鐵住金<5401>、15日 マブチモーター<6592>。

 国内の経済指標は、12日に1月の日銀のマネーストックと1月の消費者態度指数、工作機械受注、13日に1月の企業物価指数速報、14日に10~12月期のGDP一次速報、15日に12月の鉱工業生産が出る。今週出た機械受注や景気動向指数が上向きだったのでGDP速報には期待できるだろうか。

 海外の経済指標は、アメリカでは13日に1月の小売売上高と12月の企業在庫、15日に1月の鉱工業生産、1月の設備稼働率、ミシガン大学消費者信頼感指数確報値、NY連銀製造業景気指数が出る。オバマ大統領の一般教書演説は12日。週末の16~18日は三連休になる。主要企業の決算発表は13日のシスコシステムズ、14日のGMなどが残っている。ヨーロッパでは11日にユーロ圏財務相会合、12日にEU財務相理事会が開催され、13日にユーロ圏鉱工業生産、14日にユーロ圏GDP、15日にユーロ圏貿易収支が発表される。週末にはモスクワで15~16日にG20財務相・中央銀行総裁会議が開催される。円安に注文をつける発言には引き続き要警戒。なお、来週は10日が旧正月なので、韓国市場は11日まで、シンガポール市場は12日まで、香港市場は13日まで、上海、深センの中国本土市場は15日まで春節休暇で休場になり、中国の経済指標も出ない。

 国内外に注目イベントがなく、中国経済が旧正月後の春節休暇で動かなくなる来週は比較的静かな週になりそうで、それだけに今週と同じように要人の発言、スキャンダルの発生、事件や事故の市場への影響度が増す。尖閣諸島周辺に出没する中国海軍も、核実験が噂される北朝鮮も春節休暇はなく「地政学的リスク」が潜行しそうだ。それでも「不測の事態」が起きない限り、日経平均は11100~11600円あたりの値幅で推移するだろう。
 
 東京市場は引き続き海外の機関投資家がメインのプレーヤーで「為替レート次第の株式市場」「先物主導の日経平均の値動き」という傾向は変わらないものの、国内の個人投資家という、昨年まで完全に脇役だったプレイヤーが1月から大きく台頭してきた。今週、マツダ やみずほ が空前の売買高や売買代金を記録したのも、東証1部の売買高40億株超え、売買代金2兆円超えがすっかり定着したのも、7日の東京市場で、日経平均終値が100円以上のマイナスでもTOPIX終値がプラスになる「NTねじれ現象」が起きたのも、全て個人投資家の大量流入が引き起こした現象である。

 今のところ個人投資家の興味は低位株など中・小型株が中心だが、今後、日経平均採用225種の値がさ株にも進出してくると、為替レートに左右される日経平均の先物主導の値動きをほどよく中和してくれそうだ。以前はたとえば「円高を嫌気して日経平均は200円の大幅下落」だったものが、下げても押し目買いが入って下落幅が100円、50円と小さくなれば、相場の底堅さが増す。下落リスクが小さくなると、さらに多くの個人投資家が集まる好循環が生まれ、株式市場は参加者のバランスのとれた好ましい形になっていく。
 
 その方向に向かっているか日経平均で確かめられるのは、次に週単位の円高のトレンドが到来するまで待たなければならない。それまでの間、個人投資家が市場にどれだけ多く集まって、堤防の土を突き固めるように市場全体の株価をどれだけ底上げしているか推し測る目安の一つとして、来週以降はTOPIXの動きにもぜひ注目したい。(編集担当:寺尾淳)