NEDOが種子島で地域密着型バイオ燃料生産システムの実証開始

2016年11月05日 08:10

 現行の多くのアルカリ触媒を用いたバイオディーゼル製造現場では、1)回収した廃食用油の半分弱が低品質(酸価3以上)で燃料の原料として利用できない、2)製品燃料品質が不安定、3)副生石鹸除去のための水洗浄(4、5回)で生じる排水の処理が必要、4)残留アルカリ混入グリセリンの処理、などの課題を抱えている。国立大学法人東北大学で開発されたイオン交換樹脂触媒法はこれらの問題を一挙に解決できるものの、定期的な樹脂再生が必要なため装置導入コストが高く、実用化のボトルネックとなっていたという。

 そこで、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、NEDOプロジェクトで、エプシロン、国立大学法人東北大学、特定非営利活動法人こすもと共同で、種子島の西之表市で小規模な分散型燃料製造装置と集中型樹脂再生設備を開発し、地産地消に適した新たなバイオディーゼル燃料生産システムを確立した。

 このプロジェクトでは、廃熱利用可能、かつカラムの軽量化を進めた改良型の燃料製造装置を新たに1台製作し、西之表市内に設置することで、離島モデルとして島内2カ所の分散型燃料製造装置と1ヵ所の集中型樹脂再生設備からなる地域密着型バイオ燃料生産システムの試験を行っていく予定。

 このイオン交換樹脂法を用いたバイオディーゼル燃料製造装置は、酸触媒の機能を持つ陽イオン交換樹脂を充填したカラムと、アルカリ触媒の機能を持つ陰イオン交換樹脂を充填した2塔のカラムを直列に連結した構成となっている。

 従来のアルカリ触媒法では、遊離脂肪酸を含む酸価が高い油を原料利用すると石鹸が副生し、精製工程の負荷や燃料品質が著しく低下することが問題だった。イオン交換樹脂触媒法では、まず1つ目の陽イオン交換樹脂を充填したカラムで、石鹸のもととなる遊離脂肪酸が目的の燃料に転化率ほぼ100%で変換され、副生する水はイオン交換樹脂内に吸着、溶液中から除去される。続いて、2つ目の陰イオン交換樹脂を充填したカラムで、主成分の油脂が燃料に転化率ほぼ100%で変換され、副生するグリセリンはイオン交換樹脂内に吸着、溶液中から除去される。

 その結果、従来法で変換率を高めるために必要だった転化率をメタノールの過剰添加なしに遊離脂肪酸と油脂がいずれも燃料に完全に変換され、副生物全てが完全に除去されるため、カラムから流出する溶液はバイオディーゼルとなる脂肪酸エステルと微量のメタノールとなる。つまり、樹脂充填カラムに原料を通過させるだけの簡便な操作で、製品となる高純度脂肪酸エステルを製造することができるため、1回の製造に必要となる原料をタンクに投入し、ポンプのスイッチを入れるだけで、製品タンクから取り出した燃料をそのまま車輌で利用することができる。

 今後、装置製造や樹脂再生ビジネスの事業化スキームを確立することで、「地産地消に適したバイオディーゼル燃料生産事業の新たな分散型システムの確立」を目指す。そして、この離島型バイオ燃料生産システムの経済性を検証し、燃料製造装置と樹脂再生装置の事業化に向けて他島へのシステム導入を図る方針だ。(編集担当:慶尾六郎)