日本における睡眠薬の使用量が諸外国に比べて多いことが知られている。震災、仕事のストレス、経済的な不安などから不眠症や睡眠障害に悩む人が急増しており、そのことによる生産性の低下など経済的損失が顕在化している。睡眠状態と、欠勤・遅刻・早退・作業効率などの生産性や、交通事故の有無などからの解析による、日本経済全体の損失額は3.5兆円にものぼるとの算出もあり、睡眠障害はもはや個人の健康問題だけにとどまらない問題となっている。
こうした背景を受けて、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の起業家候補支援事業において不眠症治療用スマートフォンアプリの開発が進められている。サスメドとDeSCヘルスケアは、認知行動療法のアルゴリズムを用いたスマートフォンアプリの臨床試験を9月より開始。臨床試験では神経研究所附属晴和病院および芳和会くわみず病院と連携し、プロトタイプのアプリで睡眠改善効果を検証する。今後は治療用ソフトウエアを医療機器として製造販売するために必要な申請手続きを行い、開発したアプリが医療機器として不眠症治療に利用されることを目指す計画。
睡眠の質改善を目的としたアプリはヘルスケアアプリのなかでも重要な位置づけとなっており、iOSにも睡眠分析機能が標準装備されるほか、優良なサードパーティのアプリも多く発表されている。最近では脳波や眼球運動、心拍、体動、体温を測定し睡眠の質をデータ化・快適な睡眠プログラムの作成により短時間で質の高い睡眠を実現する「Neuroon」などのデバイスも登場している。このように、睡眠の質を測定・改善する手段はとても身近なものとなっており、たくさんの選択肢が用意されている。こうしたなか、サスメドとDeSCヘルスケアの開発するアプリは、不眠症治療ガイドラインにおいても第一選択肢とされ、睡眠薬にも勝るとされる認知行動療法を取り入れたアプローチとなっている。同アプリが厚生労働省の推し進めるデータヘルス計画にも寄与し、日本経済や国民の健康促進にとってもプラスの効果を及ぼすことを期待する。(編集担当:久保田雄城)