自動車の位置情報をリアルタイムに集約して渋滞情報を配信するシステム、検針員に代わって電力メーターと電力会社が通信して電力使用量を申告するスマートメーター・・・。とにかく人々の生活に関わる全てのモノや事象がIoTの影響を受けつつある。
最近経済ニュースなどで盛んに聞かれるようになった「IoT」。先月は幕張メッセで国内最大のIoT関連展示会「CEATEC JAPAN」が開催され、経済産業省が中堅・中小製造業を対象に「IoT活用先進取組事例」の募集を開始した。まさに官民一体となって盛り上げている状態だ。しかし果たして「要するに何か?」と聞かれて明確に答えられる人はどのくらいいるだろうか。
IoTとは「Internet of Things」の略で直訳すると「モノのインターネット」となる。多少意訳すると「モノのオンライン化」といったところだろうか。パソコンやスマートフォンだけでなく、全てのモノがインターネットにつながっていく。そうすることで人々の生活やビジネスが根底から変わるとされていることから、国や企業が我先にと関連の取り組みを進めている。
たとえば、身近にある飲み物の自動販売機。現在は定期的にスタッフが巡回し、扉を開けて商品の減り具合を確認して手持ちの在庫から補充している場合が多い。そこで販売機に通信モジュールを搭載してインターネットにつなぐと、在庫や故障検知を遠隔で監視することができる。商品の輸送や現地での作業にかかるコストを削減したり、リアルタイムで販売状況の確認や収益を管理したりすることが可能になる。この事例に限らず、IoTは作業工程を短縮したり人件費を抑制したりというコスト削減の効果が非情に高いとされている。
変わるのは一般家庭も同じだ。特に防犯面は高い需要が期待されている。家の扉に「スマートロック」と呼ばれる仕組みを導入してオンライン化すると、外出中も鍵の開閉状況が分かる。これは「見守り」の意味も持ち、離れて暮らす親の家の鍵が開いていないかもチェックできる。また、ホームヘルパーなどを呼ぶ際には日時限定の認証鍵をメールで渡すことができるため実物の鍵を使わなくて済む。玄関にモーションセンサーやIPカメラを設置して子どもが帰宅すると写真が自動撮影されて両親のスマートフォンに送られる、といった活用方法もある。
このように、IoTの対象はとても幅広い。「Things=モノ」である以上それは当然で、「これはモノに当たらないからIoTじゃない」と区切れるものでは決してない。自宅にあるエアコンや冷蔵庫、オフィスのエレベーターやコピー機のほか、今使っている椅子や机、持っている鞄やはいている靴、今朝買ったパンやおにぎりにまでIoTのヒントは潜んでいるということだ。(編集担当:久保田雄城)