矢野経済研究所では、世界の携帯電話サービスおよび端末市場に関する調査を実施した。調査期間は2016年6月~9月、調査対象は携帯電話・スマートフォンメーカー、国内半導体メーカー、通信事業者、関連業界団体等。調査方法は同社専門研究員による直接面談、電話・e-mail によるヒアリング、ならびに文献調査を併用した。
2015年末現在、世界における携帯電話サービスの契約数は79億4,278万 7,000契約で、世界人口に対する携帯電話普及率は111.5%に達した。これまで、市場を牽引してきたロシア、ブラジルが低迷している一方で、現在、ASEAN、南アジアエリアでの増加が著しく、北米、中南米も堅調であるという。
2016年の世界の携帯電話サービス契約数は82億819万5,000契約(世界人口に対する携帯電話普及率112.2%)が見込まれる。市場別ではアジア(特に ASEAN・南アジア)、北米市場が新規契約獲得を牽引するものの、中国、インドといった巨大市場に於ける新規契約の伸びが鈍化傾向にある。その中で、世界各国で第四世代携帯電話(4G)の商用サービスが開始され、スマートフォンについても多くのサービス事業者がローエンド(200ドル以下)価格帯の製品を対応し始めていることも手伝い、各国で4G対応が急速に進んでいる。また、中国や韓国などでは、MVNO(Mobile Virtual Network Operator)への4G回線卸しの拡大によって、市場が活性化し始めている。
2022年の世界の携帯電話サービス契約数は91億4,838万契約(同115.6%)になると予測する。先進国をはじめ第五世代携帯電話(5G)の導入が進み、IoT(Internet of Things)が様々なカテゴリの機器やサービスに導入される見通しであるとしている。
2015年の世界市場における携帯電話サービス(総契約数79億4,278万7,000 契約)の通信システム別内訳は、第二世代携帯電話サービス(2G)が 40億4,894 万7,000契約で最も多く、次いで第三世代(3G):28 億契約、4G:10億9,384 万契約となっている。2016年の世界市場における通信システム別サービス契約数は、2G:32億1,211 万5,000契約、3G:31億8,000万契約、4G:18億 1,608 万契約が見込まれる。世界市場では依然として2Gの契約数が最も多いものの、3G・4Gの普及に伴い、2Gは減少傾向にある。4Gは2014年に商用サービスが開始された中国での普及が進み、2015年末には4億近い契約数となり、他国の市場に於いてもスマートフォンの4G対応と歩調を合わせる形で増加していく見通しである。
一方で、3Gは 2019年の38億契約をピーク(2014年から2022年までの)に減少に転じる見通しで、2020年中には3G と4Gの契約数がほぼ肩を並べる水準になると予測する。2022年の世界市場に於ける通信システム別サービス契約数は、2G:5億8,238万契約、3G:37 億契約、4G:47億6,600万契約、5G:1 億契約と予測する。
世界市場における4Gサービスは先進国及び新興国の通信事業者により商用サービスが提供されている。4Gはスマートフォンの普及によってSNSや動画・音楽の配信サービス利用によるトラフィック増加に対応すべく、ネットワーク負荷の低減と効率化に優れた通信システムとして世界各国で採用が進んでいる。4Gはより高速性を高めた LTE Advanced、LTE Advanced Pro といったシステムも開発されており、5Gへの橋渡しとして2010年代後半から2020年代初頭のコアシステムとして普及が進むと考えるとしている。(編集担当:慶尾六郎)