安価な市販薬だけで酸化ストレスを検出 がんやアルツハイマー予防に期待

2016年11月16日 07:52

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理化学研究所らの国際共同研究グループは、酸化ストレスを原因とする疾患の兆候を市販薬だけで簡単に調べる方法を開発した

 脳梗塞やアルツハイマー、がんなどの疾患は酸化ストレスが原因となっていることが知られている。理化学研究所らの国際共同研究グループは、酸化ストレスを原因とする疾患の兆候を市販薬だけで簡単に調べる方法を開発した。これにより、従来の抗体を使った検出方法での、「コストが高い、利便性が悪い、結果が出るまでに時間がかかる」といった課題をクリアし、安価で迅速な検査が可能となる。

 酸化ストレスとは、内臓脂肪の蓄積による体内の酸化度上昇などにより、体内の酸化還元バランスが崩れて活性酸素が多量に生産された状態。これらがタンパク質や脂肪、拡散などと反応し、生体にダメージを与えるため、がんや動脈硬化、アルツハイマーといった多くの深刻な疾患を引き起こす。酸化ストレスの検出方法や生体に与える影響はいくつもの研究がなされており、最近では東北大東北メディカル・メガバンク機構らの研究グループが、酸化ストレスが慢性腎臓病の原因となっていることを究明している。また、生活習慣病や老化の指標としても酸化ストレスのバイオマーカーが活用されている。

 今回の研究は脳梗塞のモデル動物(マウス・ラット)の尿や血清サンプルを使用して実施された。脳梗塞のモデル動物や患者では、酸化ストレスによって発生したアクロレインと呼ばれる有機化合物が、体内のタンパク質と反応。これによりホルミルデヒドロピペリジン(FDP)が大量に生成される。そのため、尿や血液中のFDPの量を抗体で検出することで、疾患の兆候を調べられる。同研究では、FDPを直接検出するのではなく、FDPが還元する物質を測定することで、尿や血液からFDPの量を検出することに成功したとのこと。この方法では、検出に使用する塩化カルシウムと4-ニトロフタロニトリルが安価な市販試薬であることや、操作が容易で高感度であることなどから、大量のサンプルを一挙に、しかも短時間で測定可能。本手法は既にクリニックで治験が開始されており、今後、健康診断などで酸化ストレス疾患の兆候を直ちに調べる方法の開発に繋がると期待できる。(編集担当:久保田雄城)