政府が来年度より、災害時の人的被害を軽減すべく、人工知能(AI)を活用した医療情報通信システムの開発に着手する。医療の現場においてもAIの存在感が増してきており、「AIが診療に参画する時代は来る」と感じている医師が増えているという。
政府が来年度より、災害時の人的被害を軽減すべく、人工知能(AI)を活用した医療情報通信システムの開発に着手するという。災害が生じた際、けが人の治療に最適な搬送経路や装備をAIが分析し、関係機関に通知する。3~5年の実用化を目指すとした。AIが持つ高度な情報処理能力が減災につながるかもしれない。
研究については、総務省と国立研究開発法人である「情報通信研究機構(NICT)」が民間企業と共同で行う。同省は2017年度予算概算要求に、開発費として約40億円を計上。地震や自然災害に備えて、防災分野をAI開発における優先課題とする方針だ。
医療の現場においても、AIの存在感が増してきている。急性骨髄性白血病と診断されて抗がん剤治療を続けてきたものの、思うように回復しなかったという患者の遺伝子を米IBMが開発したAI「ワトソン」で解析。すると、AIは患者が別の特殊なタイプの白血病であるとし、他の抗がん剤を提案。医師たちがこの結果を検討して治療を始めたところ、数か月で回復したというケースがある。
東京大学医科学研究所では、患者の遺伝子を解析して治療に活かしてきたが、がんの全てのゲノムを解析すると、一人の患者で100万か所もの遺伝子異常が見つかる。新たな治療法や治療薬、遺伝子に関する知見が膨大であり、人手で全てを調べ尽くすのは現実的ではない。AIの助けがなければ、一人一人に合った最新医療を提供するのは難しいと感じる医師もいるという。
医師向けのコミュニティサイトである「Medpeer」が実施したアンケートによると、回答した医師3701人のうち9割が「AIが診療に参画する時代は来る」とし、「10~20年以内に来る」と答えた医師が全体の3割という結果になった。「10年以内」を含めると、全体のおよそ7割が20年以内にAIが診療に参画すると感じていることになる。
AIを活用して即座に適切な診断や治療の提案が可能となれば、緊急を要する災害時の医療においても頼もしい存在になるだろう。(編集担当:久保田雄城)