視覚体験に新技術 ロボットとドーム型スクリーンによる360度映像の生中継システム開発へ

2016年11月17日 07:33

 VR(バーチャル・リアリティ)やホログラフィといった映像体験技術が本格的に普及の兆しをみせている。VRヘッドセットではFacebook傘下Oculusの「Oculus Rift」しか選択肢がなかったものが、ソニーの「PlayStation VR」やHTCとValveの「HTC Vive」といったハイエンドなものから、米国で11月に発売が決定しているGoogleの「Daydream View」といった廉価なものまで、最近になって関連製品が続々登場してきている。また、11月1日には、日本マイクロソフトが世界初の自己完結型ホログラフィックコンピューター「Microsoft HoloLens」を日本の開発者および法人への提供決定を発表したほか、米FOVE,Inc.によるアイトラッキングを搭載した開発者用VRヘッドセット「FOVE 0」の先行予約が11月3日より開始するなど映像体験技術の躍進は目覚ましいものがある。こうしたなか、新たな映像体験技術を搭載したリアルタイム中継システムが登場した。

 凸版印刷、東京大学大学院情報学環と電通ISIDイノラボリサーチフェローは、ドーム型スクリーンとテレプレゼンスロボットによる360度映像生中継システムの開発を発表。同システムでは、ロボットのいる場所とドームをつなぎ、複数人での遠隔コミュニケーションが可能となる。遠隔地に配置したテレプレゼンスロボットに360度カメラを搭載し、そこで撮影される映像をリアルタイムでドーム(最大6人収容)の内側スクリーンに映し出すことで、ドーム内の人は自分が現地にいる感覚で遠隔地とコミュニケーションする。

 従来の映像体験器機ではヘッドセット着用が必要なのに対して同システムでは特別なデバイスの装着が不要。また、スマートフォンやパソコンなどから操作するテレプレゼンスロボットは一般に一人で操縦するものが多いのに対し、同システムでは複数人でロボットの視界や音響を共有できる。これにより、複数人による遠隔地でのライブイベント・スポーツの鑑賞や遠隔スポットの観光といったリアルな体験が可能となる。ドーム型スクリーンに関しては三角形のパネルを球状に組み立てる方式をとっており、直径1.8~3メートルの範囲でサイズ調整が可能。一般住宅でも設置できる。2017年度から段階的に事業化を進め、観光や教育用途に活用を提案していく予定となっている。仲間と一緒に遠隔地の映像・音響を楽しめて、リアルで没入感の高い体験が得られることから実用化への期待は大きい。(編集担当:久保田雄城)