米調査会社Lux Research社の分析によれば、トランプ政権が2期8年続いた場合、ヒラリー・クリントン政権と比較して温室効果ガスが34億トン(16%)増加するとのこと。クリントン政権では5億枚の太陽光パネルの設置を宣言するなど、オバマ政権の環境エネルギー政策を加速する方向で公約されていた。
モロッコで開かれたCOP22にて17日、パリ協定からの脱退の意向を示すトランプ米次期大統領をけん制する意図を含んだ「マラケシュ行動宣言」を共同発表した。同宣言は、温暖化対策への最大限の政治的努力を求めた内容となっている。
トランプ政権のエネルギー政策は、パリ協定のもと各国が推し進めている温暖化対策に逆行するものだとして懸念されている。米調査会社Lux Research社の分析によれば、トランプ政権が2期8年続いた場合、ヒラリー・クリントン政権と比較して温室効果ガスが34億トン(16%)増加するとのこと。クリントン政権では5億枚の太陽光パネルの設置を宣言するなど、オバマ政権の環境エネルギー政策を加速する方向で公約されていた。これに対してトランプ政権ではエネルギーは自国で賄うと主張。経済性において再生エネルギーよりも有利となる石油・ガス開発に重点移行すると見込まれる。
トランプ氏はクリーンパワー計画の廃止やパリ協定の脱退を公言している。パリ協定の規定上、協定発効から4年間は離脱できないものの、トランプ政権がCO2削減目標「2025年に、2005年比26~28%削減」を棚上げし、削減目標が法的拘束力を持たないことから温暖化対策を不実施とする可能性が考えられる。トランプ氏は代替エネルギーの積極的な活用を推進する替わりに、シェールオイル・ガスなどの自国の安価なエネルギー資源の生産を加速し、米国をエネルギー自立できる国にする方針だ。米国の国土全域にわたるシェール層に埋蔵される石油や天然ガスは100年ぶんを超えるといわれており、トランプ氏はシェールオイル・ガス開発に関しての規制緩和を言及している。ただしシェールオイル・ガス関連の規制を公約通りに緩和すれば、「米国内のインフラ整備」は加速するものの「雇用の確保」に対しては良い影響ばかりではない。ガスの供給量の増加により原油価格が値下がりし、これによりトランプ氏が復興を掲げる石炭業界への打撃は避けられない。世界的な原油需給バランスにも影響を与えるため自国のみの利益を追求した政策は強行できないと見込まれるが、トランプ新政権が温暖化対策の救世主でないことは間違いないだろう。(編集担当:久保田雄城)