化粧品開発ベンチャーFILTOMのFILTOM研究所は、無香料の美容液を塗布した際に感じるにおいとその日の体調について、23名の被験者からの233件のデータを解析することで相関性を見出した。同解析により、体調が悪いときには「気になるにおい」を感じやすいことが明らかとなった。
「においを嗅ぐ」行為は、食べ物が安全かどうかや仲間や異性を嗅ぎ分けるといった生物にとって重要な能力だ。人間では退化してしまったこの能力だが、体調の変化を察知するバロメーターとして活用できることが明らかになった。
化粧品開発ベンチャーFILTOMのFILTOM研究所は、無香料の美容液を塗布した際に感じるにおいとその日の体調について、23名の被験者からの233件のデータを解析することで相関性を見出した。同解析により、体調が悪いときには「気になるにおい」を感じやすいことが明らかとなった。さらには「気になるにおい」の割合は体調が悪いほど高いという相関関係にあり、体調判断のバロメーターとして、においの感じ方が活用できる可能性を示した。また、暴飲暴食時においてはその割合が顕著に高くなり、皮脂の分泌量が多い場合に「気になるにおい」を感じやすいとの結果となった。
においは、視覚や聴覚での処理のような高次のフィルターを介さずに脳に直接届けられることから、五感のなかでも特に気分や体調の微妙な変化を反映するもの。脳の最も原始的な部位、大脳辺縁系と嗅覚の関連性を示す研究は多く、これを活用することで体調の判断だけでなく、リラックス効果や記憶力・集中力を高めるなど、気分のコントロールのためのにおいの活用が注目されている。グァテマラとブルーマウンテンの香りによって、リラックスしている状態を示すα波が多く出現した(マンデリンやハワイ・コナでは同様の効果は見られず)との研究や、ビールの香気成分にストレス緩和成分であるGABAAの受容体応答を増進させる作用があるとの研究が有名だ。嗅覚の研究は未知の領域がまだまだ残されている分野でもある。たとえば、においの好みについてはわかっていないことも多く、アロマフレグランス調律協会などが現在も研究を続けている。FILTOM研究所の実施した今回の解析ではデータ曲線の傾きから「気になるにおい」の分類を明確にしており、更なる商品開発に役立てる糸口となった。近年では、においによる弊害防止やリラックス効果といった気分のコントロールを目的とした商品以外にも、体感型アトラクションのようなエンターテインメントの分野でもにおいが注目されている、今回の解析結果がにおいのさらなる活用に役立てられることが期待される。(編集担当:久保田雄城)