富士キメラ総研は、注目を集めるAIの関連ビジネス市場を調査した。その結果を報告書「2016 人工知能ビジネス総調査」にまとめた。
それによると、2015年度のAIビジネスの国内市場(製造、流通/サービス、金融、情報通信、医療/ライフサイエンス、公共/社会インフラ、その他業種)は1,500億円となった。製造や金融、情報通信業の大手企業における個別開発が中心であったことから、SIやハードウェアの市場規模が大きくなっているという。個人情報や顧客情報を学習データとして取り扱うユーザーでは、セキュリティを重視してオンプレミスでAI環境を構築しようとする傾向が今後も続くとみられる。2020年度は1兆20億円、2030年度は2兆1,200億円と大幅に拡大していくと予測している。
クラウドサービスのIaaS/PaaSをインフラとしたAI環境も構築されていくとみられる。また、オンプレミス/クラウドサービス上で稼働するアプリケーションに関しても、今後はAIを標準で搭載したソフトウェアやSaaSが拡大していくとみられる。
また、2015年度の市場は三井住友銀行、三菱東京UFJ銀行、みずほ銀行といったメガバンクのコールセンター導入で先行している金融が495億円と最大規模となっている。2020年度時点でも保険、FinTechへと導入が広がる金融が最大規模とみられるという。
2015年度から2020年度までの市場の年平均成長率は46.2%と高く、それを上回る業種は、その他業種を除くと、公共/社会インフラの67.0%である。
また、注目(AI活用製品/システム/サービス)市場の需要予測を行っている。需要予測はAIと組み合わせて提供されるBIツール、データマイニングツール、統計解析ツールを対象とした。ツール自体の性能向上に加え、企業内で生成される各種データを蓄積するためのシステムに需要予測機能が搭載されるなどの動きも今後広がっていくとみられる。コールセンター、映像監視、コミュニケーションロボット、ネットワークセキュリティ分野合計で2015年度は370億円、2020年度予測は825億円、2030年度予測は2,015億円としている。
コールセンターはコールセンター向けに提供されているAIを活用した各種システム、サービスを対象とした。オペレーターの業務支援やVOC分析などでのAI活用が今後進んでいくとみられる。
映像監視は監視カメラで撮影された映像を分析する目的でAIを解析ソフトに組み込んだソリューションを対象とした。従来は自動化に向けたアルゴリズム開発などが進められてきたが、AIを活用することでさらなる精度向上が期待される。
コミュニケーションロボットはAIを活用したビジネスユースのロボットを対象とした。現在はソフトバンクロボティクス(「Pepper」)が先行しているが、実用化に向けて試作機を開発している企業も多く、それらの企業が製品を市場に投入する2018年以降市場がさらに拡大すると期待される。
ネットワークセキュリティはAIを活用したネットワークセキュリティ製品、サービスを対象とした。機械学習などのAI関連技術を活用することにより未知の脅威への対応が可能となってくる。特に2020年のスポーツイベントを控え、サイバー攻撃の増加や高度化が予想されることからAIへの期待は大きいとしている。(編集担当:慶尾六郎)