大学入試問題は問題文を解析する自然言語処理をはじめ様々な技術が求められる統合的な課題で、点数と偏差値により成果を定量的に評価することが可能なタスクである。こうした特性を持つ大学入試問題にAIが挑戦することで、「AIが人間に取って代わる可能性のある分野は何か」といった問題を考える際の指標となりうるAIの進化の客観的なベンチマークを指し示すことになるという。
学共同利用機関法人 情報・システム研究機構 国立情報学研究所 (NII)、富士通研究所、サイバネットシステム<4312>は、国立大学法人名古屋大学、国立大学法人東京大学と共同で、NIIの人工知能(AI)プロジェクト「ロボットは東大に入れるか」(東ロボ)において、東京大学第2次学力試験に向けた論述式模試とマークシート式の大学入試センター試験模試に挑戦し、論述式模試の数学(理系)で偏差値76.2、センター試験模試の物理では偏差値59.0と、昨年度を大幅に上回る成績をあげたという。
今回、「東ロボ」数学チームは、学校法人高宮学園 代々木ゼミナールの論述式模試「東大入試プレ」に挑戦した。数学(理系)では、問題文を入力後、問題文の解釈から自動求解、解答の作成までをAI により完全に自動で行い、6問中4問を完答した結果、偏差値76.2(得点80点=120点満点)を獲得した。昨年度は、学校法人駿河台学園 駿台予備学校の論述式模試を受験し、数学(理系)は偏差値44.3(20点)だった。
従来の技術に数学チームで確立した技術を加えて、昨年度に続いてベネッセコーポレーションのセンター試験模試「進研模試 総合学力マーク模試」に挑戦。シミュレーションの設定において一部で人が介入したが、現時点の自然言語処理技術と画像処理技術を用いれば生成可能と想定される内部形式から、AIによる自動求解の結果、偏差値59.0(62点=100点満点)を達成した。昨年度と比較すると、偏差値で12.5ポイント、得点は20点向上している。物理チームは昨年度までNIIを中心に研究開発を行っていたが、今年度から、富士通研究所、サイバネット、東京大学の3団体を中心にした新体制で共同研究を行っている。(編集担当:慶尾六郎)