安倍総理のみが決断できる「選挙しない勇気」

2016年12月03日 09:14

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衆院解散・総選挙が1月にあるのかどうか。現職議員も疑心暗鬼のなか、マスコミ各社も、万一のため、小選挙区候補者リストつくりへ情報収集に掛かっているようす

 衆院解散・総選挙が1月にあるのかどうか。現職議員も疑心暗鬼のなか、マスコミ各社も、万一のため、小選挙区候補者リストつくりへ情報収集に掛かっているようす。選挙はやるべきでないというのがこれまでの筆者の主張で、今も考えに変わりない。

 TPPに関しては憲法規定により自然成立する。年金制度改革法案も圧倒的与党の数の前に成立するだろう。働き方改革においては、同一労働同一賃金の推進に対し、安倍晋三総理が賃金だけでなく、福利厚生など処遇や社員研修、社員教育での正規・非正規の格差是正にまで踏み込んで取り組むことが必要と政府の働き方改革実現会議で関係閣僚に指示した。会議には日本経済団体連合会の榊原定征会長らも席に着いている。安倍総理の姿勢には評価できるところがある。

 パートの時給を1000円にと社民党が盛んに訴えていたことを、今、政府も明確に示している。社民党は1500円を言い始めたが、かつて野党が訴えてきた諸々の政策を政府側が吸収している感がある。このため、内政において、野党側も政府・与党を攻めあぐねている感があり、野党の主張に、憲法解釈の変更や安保法制、脱原発の時のような、体に響くアピール力が感じられない。

 一方、外交をみても、日韓関係においては朴槿恵(パク・クネ)大統領と安倍総理との信頼関係の下、慰安婦問題に結論を見いだした功績は評価できる。北朝鮮問題を背景に「日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)」が短期に締結・発効をみたことの意義も大きい。

 親友だった女性の国政介入事件を巡り、朴大統領が弾劾されるかどうか、微妙な情勢ではあるが、日中韓首脳会談開催が今も完全に消失しているわけではない。合わせて、北朝鮮問題を巡っては6者協議の日米韓首席代表会合が今月中旬にも開かれるもようという。

 日露首脳会談も、北方四島の帰属問題をどう進めるのか、その先にある日露平和条約締結への道筋をどうつくるのか、経済面だけ先走りすることなく、日本の国益に適った成果をどうつくりだすのか、総理の交渉能力が注視されるところだが、何らかの成果への糸口が期待できそうだ。

 また米国の次期大統領のドナルド・トランプ氏との「私的会談」を早々に行ったことに賛否両論あるが、大統領選挙期間中のドナルド氏のTPPへの姿勢や安全保障における在日米軍負担問題などへの発言を踏まえれば、相手の真意や大統領就任後の政策を見通すうえで、貴重な情報収集ができただろうと考えるべきで、マイナス面よりプラス面が大きかったのではないかと考えられる。この会談はトランプ氏の大統領就任以降に生きてくるものと期待される。

 安倍内閣・自民にとって総選挙は訴えるにプラス材料の方が多いように思われる。しかし、だからと言って、国内外の情勢を勘案すれば、選挙で空白をつくるのは是非避けて頂きたい。

 一番、懸念されるのは、党利党略による選挙。衆院の選挙制度見直しにかかる区割りが4月にも区割り審から総理に勧告される予定で、これに基づき、政府は公選法改正案を提出することになる。早ければ5月にも改正案は成立し、最短で施行は6月になる。

 そうなれば、夏以降の解散は新しい区割りの下で、現行より小選挙区で0増6減、比例代表で0増4減の選挙となる。約100選挙区で見直しが必要となるため、自民党では党内の候補者調整が特に難航することが考えられる。

 そこで、現行制度の下で解散・総選挙に打って出て、新制度での総選挙を2年先延ばしにすれば、この2年の間に候補者調整ができるとの考えで、全く国民無視の、党利党略の「誘惑」に負ける可能性がないとはいえない。それだけは避けて頂きたいと願う。

国民に信を問わなければならないことが生じたとすれば、1月でなく「新選挙制度」の下で、政策での争いを行って頂きたい。安倍総理には今は「選挙しない勇気」を持って頂きたい。(編集担当:森高龍二)