憲法論議、国防軍是非 もっとすべき

2012年12月01日 11:00

 東京電力福島第一原発事故の実態を踏まえ、原発依存からのエネルギー転換へ各政党が取り組みを公約し、今回総選挙の争点のひとつになっている。

 日本未来の党の嘉田由紀子滋賀県知事は明確な原発ゼロの姿勢を打ち出す勢力の結集、卒原発を願う国民の声を確実に吸い上げる政党が必要だとして新党を結党した意義は大きい。

 結論をこれから先10年までに得るとした自民党、対する民主党は脱原発を2030年代に実現することをめざしながら、原子力規制委員会が安全と判断した原発については再稼動を認め、原発は40年運転制限を厳格に適用するとしながら、青森の大間原発の建設を認めてしまった。

 大間原発は2015年稼動を目指しているため、2030年代に原発稼動ゼロを実現するためには、大間原発の稼動年数は24年足らずにしなければならないことになる。

 いきなり2039年末で停止させるとなれば、稼動をストップさせる法的担保とこれにより損害賠償が発生することも否定できない。といって40年稼動を認めれば、30年代ゼロは達成できない。

 もともと、整合性がなく、矛盾をはらんだ政策と批判されても仕方のない公約になってしまっている。ともあれ、原発とエネルギー政策は今回の選挙での政党選択の大きな判断材料になる。

 一方で、日本の防衛・国のあり方を問う可能性が自主憲法制定派の自民党をはじめとした保守・中道勢力勢で大きなうねりになっている。現行憲法の護憲派は社会民主党と日本共産党くらいでしかなさそうだ。

 日本の防衛のあり方を考えるうえで、自民党が今年春に公表した憲法改正草案、そして、今回の選挙公約にあげた「憲法改正」、そこに謳われた「国防軍」についての論議は今回選挙の争点として、各党間で、街頭演説やテレビ討論、ネット討論で大いに議論していくべき課題だろう。

 「国防軍」なら「徴兵制」はどうなるのか。自民党内でも憲法草案作成の過程で「国民の国防義務を書き込むべきか否か」議論になったという。

 書き込めば「徴兵制を採るのか」との議論になるため、「わが党(自民党)は徴兵制を採らないので、国民と協力してとの表現になった」(礒崎陽輔自民党憲法改正推進本部起草委員会事務局長)という。従って自民党の憲法草案の中には「徴兵制」という文言は入らなかった。しかし、以下の文面から「徴兵制」は採れると判断する方が自然ではないのか。

 憲法草案の9条をみると、9条は平和主義を謳い、「国権の発動としての戦争を放棄し、武力による威嚇、および武力の行使は国際紛争を解決する手段としては用いない」と規定。そのうえで「自衛権の発動を妨げるものではない」とした。

 9条の2では「内閣総理大臣を最高指揮官とする国防軍を保持する」とし、「国防軍は任務を遂行する際、法律の定めるところにより国会の承認、その他の統制に服する」。

 9条の3では「国は主権と独立を守るため、国民と協力して領土・領海および領空を保全し、その資源を確保しなければならない」と規定した。

 72条(総理の職務)では「総理は最高指揮官として国防軍を統括する」と規定した。国防軍を動かす最終決定権は国防大臣でなく、総理だ。「法律に特別な規定をおかない限り、閣議にかけなくても総理が国防軍を指揮できる」(礒崎陽輔自民党憲法改正推進本部起草委員会事務局長)ことを意味する。

 礒崎氏は「徴兵制は自民党は平和主義に徹するので、採らない」と断言したが「採れない」と言わない。

 憲法9条3の規定には「国民と協力して領土・領海および領空を保全し、その資源を確保しなければならない」と国民に協力責務を負わせている。

 憲法草案の前文には「国民は国と郷土を、誇りと気概を持って自ら守り・・」と記された。自民党の憲法草案では、法律の規定により徴兵制は採れると判断するほうがより自然だろう。

 一方、民主党は今回の選挙公約で憲法への姿勢を明らかにしなかった。

 自衛隊に対する考えについて党内で統一できていないというのが実情という意見もある。

 しかし、政権をかけての選挙の中で、自民は意思を明確にしているのに、民主はこの点には「自民の国防軍を批判するだけ」では政権与党の立場としてどうなのか、ということである。

 自主憲法制定を標榜する石原慎太郎前都知事が率い、憲法改正を公約に掲げた日本維新の会や対極の護憲派(社民・共産)、対極の護憲派とは異なるであろう日本未来の党。各党それぞれの考えや方向性を今回の選挙で防衛・自衛隊・徴兵制にまで踏み込んで議論することは大事な時期にきているといわなければならない。各党の考えは外交上のメッセージとしても高いものになるだろう。論議を期待したい。(編集担当:森高龍二)