日本発の有機太陽電池、実用化の期待が集まる

2012年04月09日 11:00

 4月5日に電通が発表した「電通グリーンコンシューマー調査2012」。首都圏1都3県で15歳から64歳の男女1000人を対象としたこの調査で、一番関心が高い社会問題は「環境問題」で66%、中でも環境問題に関する認知度として94.6%の高い数字を出したものに「太陽光発電」がある。この太陽光発電であるが、近時では、京セラやシャープといった太陽光発電機器メーカーによるエンドユーザーへの広告・販売よりも、スマートハウスや光熱費ゼロ住宅といった形で、住宅メーカーがその普及の主体を担っているようである。

 エースホームから販売開始が発表された「ecoclass(エコクラス)」は太陽光発電システム搭載の光熱費ゼロ住宅。コンパクトながら太陽光発電システム4.05kwを標準搭載し、土地からの取得を考えている子育て世代をターゲットに、限られた予算でも手に届く価格の光熱費ゼロ住宅を実現している。

 また、エス・バイ・エルは、創業60周年記念モデルとして、「2世帯とペットが快適に暮らす、安らぎに満ちたスマートハウス」を提案する「やすらぎ」を4月7日から販売開始。屋上緑化・雨水貯留槽、ヒートポンプ式床暖房等、環境に配慮した設備を住まい全体に採用しており、モダンな外観デザインを損なわない緩勾配屋根への太陽光発電システムの搭載に加え、独立系直流(蓄電)LED照明システムを備えたオール電化住宅となっている。

 これら住宅屋根に利用される太陽電池は、ガラス基板に結晶シリコンの半導体を乗せたもので、市場の9割近くを占めているという。しかし近年、新しい形の太陽電池が注目を集めている。それが、三菱化学が世界で初めて開発した、材料も製造法も異なる、塗布変換型有機化合物を塗布する太陽電池である。有機太陽電池と呼ばれるこの太陽電池は、ガラス基板が不要で各層がナノサイズの薄さとなるため、従来製品に比べて重さ1/10以下と非常に軽い上、柔軟性が高く、簡単に折り曲げられるという。

 さらに4月4日、東京大学と(独)科学技術振興機構が世界最薄かつ最軽量の有機太陽電池の実現に成功したと発表。曲げ半径35ミクロンに折り曲げても、エネルギー変換効率4.2%を維持しつつ機械的にも壊れないため、実際に人間の髪の毛(半径は100ミクロン程度)に巻きつけることもできるという。また、この有機太陽電池1gあたりの発電量は10Wに相当し、この値はあらゆる太陽電池と比較しても最軽量、最薄、最柔軟な太陽電池となっている。加えて、300%伸縮させても電気的・機械的な特性が劣化しない伸縮自在な太陽電池をも実現している。

 2015年までに市場投入することが計画されている有機太陽電池。輪転機で印刷するように量産が可能なため、製造コストも大幅減の実現が可能。大面積の製品も容易に製造できる上、非常に軽量なため、自動車に貼りつけや、強度の足りない建物にも設置可能などメリットが大きい。日の当るところ、電力を使う場所には総じて太陽電池が貼り付けられる時代が来るのかもしれない。諸外国に先駆けて太陽光発電が普及していた日本。世界的に普及し始めた今、さらに一歩先に行く為の礎が築けつつあるのではないだろうか。