武田薬品が、画期的な新薬の早期上市に向けて創薬研究を行うStructural Genomics Consortium(SGC)の共同研究プロジェクトに出資し、参加する契約を締結したと発表。参加企業・団体から200名以上集うSGCの研究者の中に武田薬品の研究者が加わり、SGCの研究ネットワークを活用した創薬研究の促進を目指すという。
SGCは、創薬研究に関する大規模な官民連携による研究団体のひとつ。世界トップクラスの製薬企業が参加して、初期段階の創薬研究におけるリスクと費用を相互に分担し協力しながら、創薬ターゲットの発見に取り組んでいる。またSGCは、研究開始から一定期間が経過した研究情報を特許等の制約なく全て公開しているが、今回の出資により武田薬品は、その一定期間内に研究情報にタイムリーにアクセスすることができるようになる。さらに、研究の促進を期待するターゲットを指定してSGCに提案できることに加え、SGCの会議および取締役会に出席することが可能になるという。
医療用医薬品市場は、新興国においては、医療技術の向上や保健医療制度の普及によって、市場規模が急速に拡大している一方で、先進国では、医療費抑制政策や後発医薬品の伸長等により、成長が鈍化しているという。とくにジェネリック医薬品やバイオシミラー医薬品といった後発医薬品の市場は急拡大しており、日本国内でも富士経済の調査によると、ジェネリック医薬品市場は2010年に前年比11.1%増、2011年も同10.6%増と2ケタ成長を続けており、バイオシミラー医薬品も2010年に10億円であった市場が2014年には60億円と急成長するとみられている。
こういった環境下、医薬品企業の成長や存続の為には、新薬の開発が今まで以上に重要なものとなる。一方で、研究費をねん出する為には既販医薬品の好調な売上が必須であるが、後発医薬品がその売り上げを圧迫する状況にあり、負のスパイラルに入りつつある。その為、今回の武田薬品のように、全世界的な共同研究プロジェクトへの出資が活発化、日本国内でも同様の研究機関設立の流れが加速するであろう。医薬品業界全体が、各企業が切磋琢磨する時代から、大きな転換を迫られる時期が来ているのかもしれない。