新入女性社員の長時間労働での過労による自殺事件で、東京労働局から労働基準法違反容疑で書類送検された電通は28日、「当社はこの事態を厳粛に受け止めている。当局の調査に全面的に協力していく」とのコメントを発表した。
また「一連の問題についての責任を明確にするため、1月開催予定の取締役会において執行役員の処分を行う」とし「その他関係社員についても、社内規則に則り厳正な処分を行う」と発表した。石井直社長が辞任の意向を示している。
電通は自殺した女性社員について、法律事務所による調査で「2015年10月から急激に業務量が増大し、12月にかけて長時間労働の状態にあり、加えて、仕事への責任感や職場での人間関係等が強い心理的ストレスとなっており、そのような心理的ストレスが自殺の原因となった可能性は否定できないとの報告を受けている」とした。
そのうえで「新入社員であった点を考慮すれば、パワハラとの指摘も否定できない、行き過ぎた指導がなされていたことを認識しております。新入社員である彼女に対して、内に秘めた心情や不安を思いやる想像力や十分なサポートが足りなかったと深く反省しております」とした。
一方で、法的責任については「調査を行った外部法律事務所からは、一部に行き過ぎた指導や適切とは言えない言動が見受けられたものの、法的に不法行為に該当する行為は認められなかった旨の報告を受けております」と不法行為はなかったとの報告を受けているとした。法人としての電通および女性社員の上司だった幹部社員が労基法違反容疑で送検されたことを受けてのコメントとしては容疑にあたる行為はなかったと提起しているようにもみえる。
再発防止にむけた対応では「11月に発足させた電通労働環境改革本部を中心に、労働環境改善と長時間労働撲滅に向け、実効性をあげていけるよう全力で取り組む」と改めて、取り組みを進める姿勢を伝えるとともに「1月からは過重労働問題の根本的な解決に向けて、新たに任命した専従執行役員を中心に、法令順守の徹底と実効性のある再発防止策を推進していく」とした。
また「各局に人材マネジメントを担当するマネジメント職を新たに配置することで、局員のタイムマネジメントや健康管理、ハラスメントの防止、業務アサインの適正化やキャリア開発支援等、人材マネジメントを総合的かつきめ細やかに行っていく」とし「進捗と実効性について外部有識者による監督委員会を設け、検証を継続していく」としている。(編集担当:森高龍二)