2017年以降の携帯電話キャリアは、メージャーキャリアの動きでは、docomoの首位、auの2位という構造に変化はないだろうか。格安サービスの普及加速を考えれば、同サービスにインフラ、プラットフォームを提供するMVNO契約も伸びていくことも確実である。このため、docomoはさらにシェアを拡大することも予想される。auの2位の座が揺らぐこともないだろう。ソフトバンクの低落についても、事業再編の影響が一段落し、歯止めがかかることも見込まれる。
しかし、2016年からスマートフォンの安売りや規制の強化が進められている。総務省が主催する有識者会議では、最新のスマホ購入に際しての実質負担額を現在の最低1万円程度から上げる、週末など期間限定の大幅割引などを防ぐことを求めている。また、販売店への奨励金も制限を求めている。同会議では、さらに、SIMロックの解除について、購入から現在の「購入後6カ月」よりも早くするように求めている。総務省としては「3カ月程度」に短縮させたい意向である。これらの措置により、端末を頻繁に買いかえる利用者と長く使う利用者の不公平感を減らすとともに、通信料金の引き下げを進め、より多くのユーザーがより安く利用できる環境を整備することが同省の狙いである。
このように2017年以降は携帯電話キャリアに対して新しいビジネスモデルの確立が求められていくことになる。前述のように大手キャリアによる携帯電話事業に対する制約の強化により、サービス、スマートフォンの料金上昇が予想されることから、MVNOは2017年以降、さらに契約件数を拡大していくことが見込まれる。2017年度(2017年4月~2018年3月)には1170万件と1000万件を突破するとの予想(MM総研調べ)も発表されている。2012年度と比較すると15倍もの拡大になるとしている。
総務省もMVNO普及に向けて環境整備を進めることが期待できることから、さらなる拡大が期待できる。来年も大手キャリアの端末割引の制約が一層強化される可能性が高く、MVNOに流れるユーザーは増えていくと予想されることから、MVNOの拡大傾向はまだまだ続くだろう。
普及を加速するため、MVNOでもサービスの充実を図っていく。MVNOは従来、データ通信需要を核に普及を図ってきたが、2017年以降は定額通話サービスにも力を入れていくことが見込まれる。また、店舗数を拡大するとともに、格安SIMカードとスマートフォンのセット販売、さらに大手キャリアのようにデータ通信、定額通話、IP電話などのサービスを組み合わせることで価格を抑えることのできるセット販売のメニューを充実させるなどか、販売面での強化を図っている。
NTTコミュニケーションはdocomoと同じNTTグループ、Y-Mobileはソフトバンク・グループと、メジャーキャリアもMVNO事業に力を入れている。auで携帯電話事業をKDDIグループも2016年12月にビッグローブの買収を発表、2017年1月には傘下に収める計画である。これにより、3メジャーキャリアがいずれもMVNOをグループに持つことになる。これによりMVNOの業界構造が変化していくことも予想される。(編集担当:慶尾六郎)