働き方改革の一環で政府は正社員の副業や兼業を後押しする姿勢を示しているが、日本経済団体連合会の榊原定征会長は10日の記者会見で「実態や課題を踏まえて慎重に検討することが必要だ」とし「今のところ、旗を振って推進する立場ではない」と副業・兼業には否定的な姿勢を明確にした。
榊原会長は「副業・兼業については一部の企業で認めてはいるものの、多くの企業では就業規則で『職務専念義務』を定め、禁止している」とした。
榊原会長は「副業・兼業を通じた社員の能力開発や人材開発といったポジティブな側面もある」と副次的な効果のあることも認めたうえで「社会保険料や雇用保険料の負担、労働時間の管理など整理すべき課題は多い」と提起した。
また「経団連は長時間労働の是正を重要課題に掲げ、働き方改革に取り組んでいる。こうした状況下で、副業・兼業を推奨するのにはやや抵抗がある」とも語った。職務専念義務に加え、現行でも長時間労働が社会問題になっている中で、従業員が兼業や副業を持てば、企業側が従業員の労働時間を短縮する努力をしても、兼業・副業で時間がとられ、結果的に従業員に自由な時間がなくなり、過重労働(過重負担)になりかねない危険性も否定できない。
政府は同業他社に企業秘密が漏えいする危険性がある場合や長時間労働につながるケースなど、問題防止を踏まえたモデルとなる「就業規則」などを示し、正社員の副業を後押ししていきたい考えだ。ただ、榊原会長の提起通り、課題も多い。(編集担当:森高龍二)