厚生労働省は、2016 年4 月に「ストレスチェック制度の施行を踏まえた当面のメンタルヘルス対策の推進について」通達を出し、メンタルヘルス対策が一次予防から三次予防までを総合的に進めるべきものであるとしつつも、当面は、ストレスチェック制度の履行確保をメンタルヘルス対策の最重点課題として位置付け、同制度の導入を契機とした段階的なメンタルヘルス対策の推進を基本方針とするなど、ストレスチェック制度を強力に推し進める方向性を明らかにしている。
市場調査・コンサルティング会社のシード・プランニングは、EAP・メンタルヘルス市場に関する市場動向調査を行い、その結果をまとめた。
2016年の企業・団体におけるメンタルヘルス対策では、「体制整備」、「専門職スタッフ確保」の実施が9割以上となるほか、「ストレスチェック」を約9割の企業・団体が実施するなど、ストレスチェックの実施を中心に介入施策の取組みが進んでいる。
2012年、2014年の調査結果(調査は、2012年からの継続調査で隔年実施)と比較すると、2014 年から2016 年の推移では、「ストレスチェック実施」を「EAP 事業者に委託」する割合が13.3 ポイント増加するなど、外部委託が活況だが、その他の項目ではEAP への委託割合は微減傾向にある。多くの企業では、2016 年のストレスチェック制度初年度は、ツールやノウハウのないストレスチェックのみを外部委託して、その他のメンタルヘルス対策を、社内の産業保健体制を強化するなどして「社内のみで実施」する傾向がみられるという。
企業のメンタルヘルス対策の優先順位を上位3 つまで聞いたところ、「長時間・過重労働」(23.4%)が最多となり、次いで「うつ病等の精神疾患」(22.2%)、「ハラスメント」(12.7%)が続いた。2014 年に「過労死等防止対策推進法」が施行され、2015 年には過労死等の防止のための対策に関する大綱が策定されるなど、企業等においても問題意識の顕在化傾向がみられる。
ストレスチェック制度関連市場を含めたEAP・メンタルヘルス領域の市場規模は、2016年に166.4億円と推計。2020年には217.3億円の市場に成長すると予測される。2017年に事業場の8割、2020年にはすべての職場でメンタルの措置が受けられるとの国の目標をめざし、ストレスチェックを含むメンタルヘルスケアのさらなる市場拡大が期待される。健康経営や働き方改革、女性活躍推進等の機運による従業員の就労課題解決と生産性向上、組織活性等の支援がEAP市場の確立と拡大をけん引するとしている。(編集担当:慶尾六郎)