日本のビール大手5社が発表した2016年のビール、発泡酒、第3のビールを合わせたいわゆるビール類の国内総出荷量は、4億1476万ケース(1ケース:大瓶20本換算)となり、前年比97.6%だった。これで12年連続、過去最低を更新したこととなる。少子高齢化や景気低迷に伴う外食控えのほか、缶酎ハイなどRTD酒類の台頭で、市場規模縮小に歯止めがかからなかった。
また、2003年に第3のビールが登場して以来、初めて「ビール、発泡酒、第3のビール」の全ビール類飲料がマイナスとなった。
まず主力のビールは2.0%減の2億1070万ケース。各社の集中的な強化策で19年ぶりに出荷量が0.1%増とプラスとなった2015年から一転、いとも簡単に減少傾向となった。発泡酒は前年6.8%減、割安感で成長品目だった第3のビールも飽和状態となって前年に比べて1.2%減った。第3のビールの前年割れは、これで3年連続である。減少した理由は「ハイボールやチューハイなどの人気が高く、若者を中心にビール離れが加速している」からだという。
こうした市場環境に加え、消費の増える第3四半期の夏場、天候不順だったのも響いた。
メーカー別でも全社ビール類出荷量が前年を割り込んだ。メーカー別シェアの順位に変動はない。ビール類のメーカー別シェアでは、アサヒビールが39.0%で、ビール類トータルの販売数量1億6130万ケース(前年比100.3%)だった。
キリンビールがシェア32.4%の2位だが、第3のビール「のどごし」の不調などでシェアを1ポイント減らした。キリンのビール類全体の販売数量1億3410万ケース(前年比94.5%)だった。しかし、ビールの主力ブランドである「一番搾り」の販売が3年連続で前年を上回ったという。
残りのシェアは、サントリービールが15.7%、サッポロビールが12.0%、オリオンビールが0.9%という結果だった。
また、ビールの容器別販売動向を見ると、「家飲み」向けの缶ビールの出荷量の前年比は100.3%だった。が、外食向けの樽&タンクでの出荷量が97.5%という奮わない結果だった。従来からビール消費の主力だった外食向けの落ち込みが大きいことが鮮明になった。
一方、ビール類の酒税税額は現在、350mlのレギュラー缶で、ビールが77円、発泡酒が47円、第3のビールが28円大きくと異なる。政府は2017年度税制改正大綱で、2020年から税率見直しを段階的に行ない、2026年10月に54.25円に一本化するとした。
これに伴いビール大手各社は本格ビールの酒税が、相対的にも絶対的にも下がるのを見据え、「本格プレミアムビール販売をさらに強化する」としている。しかし、ビール需要の回復に向けた道筋は相当険しい。各社の思惑通りに市場が拡大するかどうか、見通せない状況だ。
ビール類アルコール飲料の出荷量は1994年に、最高出荷5億7300万ケース/年を記録した。しかし、その後の少子高齢化や若年層のビール離れなどで2016年はピーク時の4分の3程度の水準にまで落ち込んでいる。(編集担当:吉田恒)