ビール系飲料、酒税統一に動く。国内市場が縮小するなかでのビール各社

2017年01月03日 11:58

Beer Tax

コンビニの棚を埋める「ビール」と「ビール類」の数々。対年度には税金が統一に向けて動き始める……。と、同時に商品開発と企業戦略が問われる。第3のビールは生き残れるか?

 2016年10月26日、NHKニュースをはじめとした大手メディアが、「財務省は、麦芽比率などに応じて税額が異なるビール類の段階的な酒税の一本化について、税制改正で結論を見送る方針を固めた」と一斉に報じた。

 が、しかし、政府与党は年も押し迫った12月になって、2017年度の税制改正大綱を決定し、そのなかに酒税法改正が盛り込まれた。これによって、ビール各社は法改正に対応した2017年以降の商品戦略を新たに練る必要に迫られる。

 酒税法改正の大きな柱は、ビール系飲料の税率一本化だ。現在、ビール系飲料で分野ごとに価格・税金の違いを比べると、おおむねコンビニなどでは、レギュラー缶と呼ぶ350ml缶で、ビールは221円(うち酒税が77円)。発泡酒164円(同47円)、第3のビール143円(同28円)となっている。改正大綱によると10年後の2026年に、ビール系飲料の酒税を一本化して54.24円にするとしている。

 以前から自民党税制調査会や財務省は、“ビール系の税額が大きく違う”ことを問題だとして、2015年度税制改正大綱でも「格差を縮小・解消する方向で見直し、速やかに結論を得る」としていたことが具体的に動き出したわけだ。

 ビール系酒税統一に向けた見直し議論は、数年前から政府から出たり引っ込んだりしてきた。しかし、ビールよりも低廉な発泡酒や第3のビール購入してきた消費者の抵抗は根強く、2015年末の税制改正論議において、ビール税統一は、消費増税とともに参院選への影響を恐れて見送られた。が、中期的なビール類の酒税一本化の方針は撤回せず、段階的に実施するとしていた。

 ただ、ビール各社は一昨年あたりから、ビール系税制一本化を睨んで、商品開発を進めてきた。各社とも“本物のビール”回帰が消費傾向として本格化するとみて、このカテゴリー強化に乗り出している。だからといって、発泡酒や第3のビールがすべてコンビニなどの棚から無くなってしまうわけではなさそう。発泡酒や第3のビールでも、強いブランドはビールと価格差を付けて残すことになりそうだ。ただし、2017年以降に発泡酒や第3のビールのリストラは確実に始まる。

 業界の予想では、「発泡酒・第3のビールのリストラ」を生き残るのは、「糖質ゼロ」「プリン体オフ」などをキャッチフレーズにした機能性飲料だという。現状でビールには厳しい原料規制があり機能性飲料は開発しにくい。それが発泡酒や第3のビールの生き残る道となりそう。つまり、ビールは「旨さ、味わい」で勝負する製品として開発し、その他は機能性で売る商品となるわけだ。

 国内ビール市場は,1994年をピークに縮小傾向を続ける。若年人口が減り、加えて若者のアルコール離れが起きた。新興国を軸とするグローバル市場の争奪戦でも後手に回った。

 2017年以降、ビール各社は商品開発だけを行なっていれば良いわけではない。国内首位のアサヒグループホールディングスは海外戦略を加速させる。2016年10月に西欧のビール事業者を3000億円で取得し、12月には東欧のビール会社を9000億円で買収すると発表した。同社は国際的に通用するプレミアム価格のブランドを手中に収めて世界戦略を練る。

 一方、2015年にブラジル事業が足を引っ張り、上場以来の赤字を計上した国内2位のキリンは海外戦略ターゲットをアジアに置く。鍵となるのは、好景気で高い経済成長を示しているベトナムだ。ベトナム政府は国営ビール会社2社の売却を考えており、その争奪戦が2017年の大きなポイントとなる。

 残るビール2社は海外戦略が描けない。国内市場が縮小するなか海外展開に活路を求める大手2社と明暗が分かれそうな予感だ。(編集担当:吉田恒)