財務省は、来年度(2017年度)の税制改正で、ビール系の飲料にかかる酒税の見直しを検討する。ひと缶350ml当たりの税額を数年に分けて55円に統一する案が主流といわれる。現在、正規ビールに比べて税額が安い発泡酒と第三のビールを増税し、一方でビール税額を減税する。「税額の差をなくして公平な競争環境を整える」との財務省の見解だが、酒造メーカーや消費者は、「取りやすい所から“搾り取る”単なる増税案でしかない」と反発を強めている。しかしながら、政府与党は秋から調整を本格化し、年末までに結論を出すとしている。
現在適用されている酒税法によると、ビール系アルコール飲料は、麦芽比率や原料によってビール系飲料を区分、異なる税額を適用している。350mlあたりの税額はそれぞれ正規ビールが77円、発泡酒が47円、第三のビールが28円となっている。
ビール系酒税統一に向けた見直し議論は数年前から政府内で出たり引っ込んだりしてきた。そうしたなかで、ビールよりも廉価であることを理由に発泡酒や第三のビール好んで購入してきた消費者の抵抗は根強く、2015年末の税制改正論議において、ビール税統一は、消費増税とともに参院選を睨んだ恰好で見送られた経緯がある。
酒税見直しを改めて財務省が提案するのは、「似たようなアルコール飲料なのに税額が違うことによる市場のひずみを是正する」としているが、税額の低い第三のビールなどの開発に力を注ぎ、売上アップを狙ってきたメーカーも反発を強めている。
税額の差は小売価格にも大きく影響しており、最も高いビールは最も安い第三のビールの約1.5倍。財務省の原案どおりビール系アルコール飲料にかかる税額が一本化された場合、正規ビールの小売価格は安くなるが、増税になる発泡酒や第三のビールの価格は高くなる。
酒税の税収は約1.3兆円。財務省は2017年度税制改正で現在の税収総額で変えないことを前提に、ビール系アルコール飲料の税額を350ml当たり“55円”に統一する構えだ。
今回のビール系飲料の税額統一案は、消費者や酒類販売店、酒造メーカーへの影響は大きい。財務省も全方位に配慮しながら、数年の移行期間をおいて段階的に税額を一本化するつもりらしく、統一まで何年かけるのか、その期間も議論となりそうだ。(編集担当:吉田恒)