自民、公明の政権両党は、生活必需品の消費税率を低く抑える軽減税率を導入する財源として、タバコ税を増税する案の検討に入った。軽減税率の対象品目を公明党が主張する「酒類を除く飲食料品」として消費税率を2%軽減した場合、1.3兆円の財源が必要となるからだ。ただ、2017年4月の消費増税と同時にたばこ増税に踏み切れば「喫煙者に2重の負担を強いる」との声もある。タバコ増税に踏み出せるかどうかは不透明だが、取り敢えず“取りやすい所”ではあるわけだ。
現在タバコ税は、一般的な銘柄で1本あたり12.244円だ。今年度、国・地方あわせて約2兆円の税収となる見込み。増税すれば喫煙者のたばこ離れが想定されるのは確かだ。が、「1本1円の増税で1500~1700億円程度は捻出できる」とする指摘もあり、検討の余地はある。
自民党税調は、「消費増税分は社会保障費に充てる」とした2012年の自民、民主、公明の3党合意に基づき、「税と社会保障の一体改革」に従って「軽減税率を導入した場合の財源は、一体改革の枠内で工面する」という考え方をとっているという。よって、たばこ増税に踏み切れば枠外の財源に頼ることになり、自民党税調のなかには抵抗もあるようで、自民党内で反発が強まることも予想される。
自民党政権は1998年以降も、2003年にタバコ増税で企業減税の穴埋めをするなど、財源の帳尻合わせに使ってきたが、1本1円未満の増税にとどめていた。一方、民主党政権時代には2010年10月に1本3.5円増税を実施した。販売は減少傾向だが、税収は2兆円台を維持している。
一方、タバコの値上げには、別の動きもある。2020年の東京五輪・パラリンピックに向けて、受動喫煙対策を強化する動きが活発化してきている。喫煙者にとってはかなり厳しい情勢になりそうだ。過日、自民党・受動喫煙防止議員連盟(山東昭子会長)が総会を開き、基本方針をまとめた。
そこで、公共施設などでの分煙を進め、受動喫煙による健康被害防止につなげる基本法の骨子もまとめ、次の国会への提出をめざす方針も確認。同時に「タバコ税を大幅アップし、思い切って1箱1000円にする」よう求めていくことを決めたという。タバコは現在1箱410~450円が主流のため、約600円も値上がりすることになり。自民党・受動喫煙防止議員連盟総会では、日本のタバコの価格が「米英の価格の3割ほどで、まだまだ安すぎる」と指摘されていた。
厚生労働省によると、2003年に27.7%だった日本人の喫煙率は、2012年には20.7%にまで減少。喫煙者自体が少数派になりつつある。
タバコを巡っては2011年に、当時の小宮山洋子厚生労働相が、「販売価格を年100円ずつ引き上げ、1箱700円ぐらいにしたい」と語り、愛煙家の顰蹙をかった。その際、小宮山氏は、「いろいろなデータをみると、700円までなら税収は減らない」と主張していた。さらに、当時、タバコ行政について「財務省が所管するのはおかしく、健康のために厚労省が所管するようにしたい」とも述べていた。
一般的によく言われる、「タバコ増税で消費量が減少すると、葉タバコ農家やタバコ小売店が打撃を受ける」というのは本当だろうか?(編集担当:吉田恒)