国立がん研究センターと全国11の保健所などが実施する、長期間にわたる大規模追跡研究「JPHC Study」(「多目的コホートに基づくがん予防など健康の維持・増進に役立つエビデンスの構築に関する研究」)の一環として、同研究に参加した時点でがんや循環器疾患ではなかった40~69歳(10万6324人)の人々を対象に、その分析データからコーヒーの摂取量と脳腫瘍発症の関係が調べられた。
国立がん研究センターと全国11の保健所などが実施する、長期間にわたる大規模追跡研究「JPHC Study」(「多目的コホートに基づくがん予防など健康の維持・増進に役立つエビデンスの構築に関する研究」)の一環として、同研究に参加した時点でがんや循環器疾患ではなかった40~69歳(10万6324人)の人々を対象に、その分析データからコーヒーの摂取量と脳腫瘍発症の関係が調べられた。同調査では、研究開始時にコーヒーおよび緑茶の摂取習慣を質問票にて取得、1990年または93年から2012年末までを追跡し、脳腫瘍発症との関連をみた。
調査ではコーヒーの摂取量に応じて、週に4日以下(人数:6万1371人、参加時点の年齢平均:53.3歳、男性の割合:44.1%)、1日に1~2杯(同2万8345人、同50.1歳、同40.0%)、1日に3杯以上(同1万2230人、同47.9歳、同75.0%)の3グループに分けられた。平均18.1年の追跡期間中に、157人が脳腫瘍と診断されており、そのうちわけは、コーヒー摂取量が週に4日以下だったグループで102人、1日に1~2杯だったグループで45人、1日に3杯以上だったグループで8人との結果となった。コーヒーの摂取量が1日3杯以上のグループでは、週に4日以下のグループと比較して脳腫瘍のリスクが53%低いことになる。コーヒーの摂取量に応じて段階的に脳腫瘍抑制効果がみられるわけではなく、1日1~2杯のグループで大きな脳腫瘍のリスク軽減はみられなかった。このことから、摂取量が一定レベルを超えることで脳腫瘍抑制効果が現れる可能性が考えられる。緑茶に関しても同様の調査が行われていたが、効果が見られたのはコーヒーのみだった。
同じくJPHC Studyにて、コーヒー摂取量と肝がんの発生率についての調査も実施されており、コーヒーをほぼ毎日飲む人では、ほとんど飲まない人と比較して肝がんの発生率が約半分で、摂取量が増えるほど発生率が低下することが確認されている。また、ギリシアのハルコピオ大学の研究グループによる10年にわたる追跡調査により、コーヒー摂取量が1日1.5杯以上の人は、それ未満の人と比較して2型糖尿病にかかる確率が半分であることがわかっている。
こうしたコホート研究は、規模が大きいという点で、集団の傾向をよく表しているが、因果関係についての詳細ははっきりせず、予測の域を出ないという弱点があり、さらに信頼度を高めるために、コーヒーの成分による検証などの追加研究の実施が期待される。(編集担当:久保田雄城)