三菱重工が中国の江蘇政田重工に舵取機などの製造・販売ライセンス供与

2012年03月23日 11:00

 三菱重工が、中国の江蘇政田重工股?有限公司(江蘇政田)に舵取機および甲板機械の製造・販売権を供与することで合意し、ライセンス契約を締結したと発表。江蘇政田へのライセンス供与は、2008年のデッキクレーンに次ぐもので、船舶向けの油圧3製品を組み合わせて拡販できる体制を整え、急成長を続ける中国造船市場におけるシェア拡大につなげていくとのこと。ライセンスに基づく初号機の完成は12月末を予定。2013年には生産能力が現在の2倍を超える新工場を稼働する計画であるという。

 江蘇政田は2005年に、ウインチ製造会社である政田鉄工と江蘇省の産業機械製造会社の合弁により設立された船舶用甲板機械の製造会社で、三菱重工とデッキクレーンのライセンス契約を締結して以来順調に生産台数を伸ばしており、2012年は200台の生産を計画している。

 今回製造・販売権の供与対象となる舵取機と甲板機械は中小型船舶向けで、駆動源となる油圧機器は同社が供給する。これにより江蘇政田は、デッキクレーンに舵取機と甲板機械を加えた3製品を「三菱」の同一ブランドで供給できる中国で唯一のメーカーとなり、これらをパッケージ販売するなどして営業面での相乗効果を追求していく。一方、三菱重工は江蘇政田との協業強化により、油圧3製品について中国で現地生産機能を確保するとともに、販売機能の拡充を実現。貨物船などの建造量が伸びている同市場で三菱ブランドのシェア拡大を目指す。

 三菱重工は、1905年創業の神戸造船所での商船建造を終了させたり、中国企業への技術供与を進めたりと、2010年に決定した船舶・海洋事業の生産再編方針を進めている。日本企業が生き残っていくためには避けがたい再編方針といえるかもしれない。しかし、高付加価値を生んでいる高い技術力が諸外国に流出し、それに裏付けられた日本企業のブランドイメージが低下する事態を危惧する声も聞かれる。技術供与やライセンス契約は、結果日本企業の再興を妨げることになりかねないということであろう。このジレンマを各造船企業はどう克服していくのか、今後の動向に注視したい。