カーナビが標準化したあたりから、車との関わり方や楽しみ方が少しずつ変わってきた。一昔前のように排気音や車体のクセなどを楽しむようなマニアックなドライバーは少なくなり、車内をより快適に過ごす方向へシフトチェンジされてきたのだ
カーナビが自動車の標準装備になったのは、いつの頃からだろう。かつては高級車だけに許された特別仕様のオプション扱いだったものが、いつの間にか大衆車にまで普及し、今では軽自動車にも当然のように搭載されている。
カーナビが標準化したあたりから、車との関わり方や楽しみ方が少しずつ変わってきた。一昔前のように排気音や車体のクセなどを楽しむようなマニアックなドライバーは少なくなり、車内をより快適に過ごす方向へシフトチェンジされてきたのだ。
それに拍車をかけたのが、日産自動車の「リーフ」や三菱重工の「i-MiEV」などに代表される電気自動車(EV)やトヨタ自動車の「プリウス」でお馴染みのプラグインハイブリッド車(PHV)だろう。EVやPHVの登場により、自動車自体の静音化が進み、自動車にインターネット通信機能を付加したコネクテッドカーなど、カーインフォテイメント発展の地盤が出来上がった。
そこで、高精細な車載用モニターなどとともに需要が加速しているのが、高音質のカーオーディオシステムだ。一般社団法人日本オーディオ協会の調査によると、2015年度のカーオーディオの出荷金額は5411憶円。前年比95.2%と減少しているものの、消費税増額後は新車登録台数の前年割れが続いていることや、軽自動車販売も税制有利性が無くなって急減したこと、そして年々増加傾向にある若年層の車離れはなどで、自動車の国内販売台数自体が伸び悩んでいることが大きな要因と考えられるので、カーオーディオ自体の需要が減っているというわけではない。
また、ハイレゾリューション音源の普及がカーオーディオにも波及していることで、これまで以上に音源のもつ情報量を正確に表現する必要が増している。Bluetoothを利用して、スマホや、ソニーのハイレゾウォークマンなどのポータブル音楽プレイヤーを使って高音質な音楽を楽しむ人も増加している。車においてはこれまで以上に、低ノイズの特性や高音質のオーディオ性能が求められてるのだ。
ところが、車載オーディオのコアとなるオーディオ用SoC(音源からオーディオ信号を取り出し、出力する一連の機能をもつIC)は、製造プロセスの微細化に伴う低電圧化により、扱えるオーディオ信号が小さくなっており、相対的にフロアノイズが増えている。これに対応するため、電子部品大手のロームは2017年2月6日、車載オーディオの音量調整や音声ミキシングを行うサウンド・プロセッサ「BD34602FS-M」を発表した。同製品はオーディオで要求される電気的特性、歪、ノイズにおいて、業界最高クラスの低歪率0.0004%とボリューム減衰時のフロアノイズ3.1μVrmsを達成しており、車内での音像定位の向上や、ボリューム減衰時の臨場感に貢献する製品になっている。さらに、ナビ音声やハンズフリーの音声割込み機能を搭載しており、ミキシングをON/OFFする際の不快なポップノイズを低減することにも成功しているという。スピーカーとの距離が近く、ノイズが目立ちやすい車内において、臨場感のあるハイレゾ音源を楽しみたい、という新たなニーズに対応した製品だと言えよう。
自動運転技術の開発など、自動車が大きく生まれ変わろうとしている潮流の中で、映像や音声といった、縁の下を支えるこうした日本の技術は、これから益々重宝されてくるのではないだろうか。(編集担当:松田渡)